学校での歯科健康診断について
健康診断はなぜ行うのでしょう。 それは病気を気にせず、勉強やスポーツなど学校生活が明るく元気に過ごせるように健康状態をチェックするために行います。もち論、もっとより良い健康な生活を送れるようにするためには、どうすれば良いかも、併せてみます。
それでは口の中のどんなことをチェックするのか述べてみましょう。 まず歯をみます。むし歯になっていないかどうか、前に治療した歯がちゃんとしているかどうかをみます。歯のかけている所もチェックします。それは歯を失った所に人工的に歯を入れるべきかどうかを判断します。 次に、むし歯に進みやすい状態にある歯や、歯と歯の間のただ見ただけではむし歯かどうか判別できないものもチェックします。 2番目に顎の関節の状態に異常がないかどうか、歯並びやかみ合わせに不正がないかどうかをチェックします。 3番目に歯を支えている歯の周りの肉や骨に病気がないかどうか、併せて歯の汚れ方についてもチェックします。 健康診断の記号
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それでは今述べたことについて、1つずつ説明して行きましょう。 | ||||||||||||||||||||
(1)むし歯(C)について @なぜむし歯になるの? むし歯とは、歯の表面のエナメル質や象牙質の歯質が崩壊してゆく病気です。食物(砂糖)が口の中に入ってくると、口の中に住んでいるストレプトコッカス・ミュータンスという菌が、砂糖を分解しグルカンを産生します。 これは水に溶けにくく、粘着性を持っているため、歯の表面に強く付着します。さらに、食物残さ(食べかす)や他の菌が加わり歯垢(プラーク)を形成します。 歯みがきをせずに、この歯垢を放置すると、歯垢中で酸がつくられ。この酸の下でエナメル質の脱灰(歯の表面が溶け出す)がおこります。脱灰された歯質にも、さらに菌が入りこみます。この結果、むし歯が順次進行するのです。 簡単に言うと、口の中に住んでいるミュータンスという菌が人間が食べた食物、特に砂糖を栄養にして育つと同時にプラークという家を建てて住みつき、その中で砂糖から酸をつくり出して歯の表面を溶かしていくとむし歯ができるのです。 A要観察歯(CO)について むし歯とは判定できないが、歯に変色(白や褐色)などのむし歯の初期症状が認められるものです。将来はむし歯に移行し易い状態ですので、注意深く歯みがきをしなければなりません。 そのため、定期的に観察が必要ですので、この名前がついてます。 Bむし歯の予防 むし歯ができる要因は4つあります。それは食物(糖)、むし歯菌、時間、それに歯(歯がないとむし歯ができないから)です。 この1つでも完全に抑えればむし歯はできないはずですが、歯(歯質)の強化には限界があり、菌や食物(糖)を完全になくすことは不可能です。 従って、健康に留意し、歯に対してはフッ素塗布をして資質の強化をはかったり、あるいは予防充填をしたり、食事や間食に注意して(口の中のPHを下げないか、下がった時間をなるべく短くすること…)、食後は必ずていねいに歯みがきをするなどして、4つの要因に対して可能な限り努力することが大切です。 (2)歯の喪失(喪失歯△)と要補綴について 学校での健康診断の時に永久歯の無い人は、むし歯、ケガ、矯正治療のために抜歯、生まれつき永久歯が無い、またはまだ顔を出してないかのいずれかです(子供のうちに歯周病で永久歯を失くすることはほとんどない)。 このうち、むし歯で永久歯が無い場合は喪失歯(△)とします。そして1本でも歯の無い状態が続くと、隣の歯がすきまに傾いて倒れてきますので、歯の無くなった所(欠損と言います)に人工的に歯を入れて、倒れるのを防ぐと同時に、ものをかめるように回復してやらねばいけません。 しかし、子供の時は支えになる両隣りの歯がまだ未萌出(顔を出さない)だったり、半萌出(完全に顔を出さない)の状態ですので、治療が不可能な場合が多いけれども、萌出していればブリッジや入れ歯を入れた方が良い(要補綴と言います)のでチェックします。 また、 の印は喪失歯(△)の所を処置(○)したということで という印を使ってます。 (3)要注意乳歯(×)について:次の時に×印を付けます @下の永久歯が萌出(顔を出すこと)しても、まだ乳歯が残っている時。 (永久歯と乳歯のすきまに歯垢がつき、菌が増え、むし歯になりやすい) A下の永久歯の萌出の徴候が明らかな時。 (乳歯がじゃまをして、永久歯が曲がった位置に萌出することがある) B乳歯の根がすごく短くなって、動いている時。 (食物をかめなかったり、かたよって反対側だけでかむと顎の関節に影響を及ぼす) C乳歯の根の先が肉から出てしまっている時。 (その部分の肉がはれたり、化のうしたりする) D歯の根しかない状態で、交換期に近く、動き出している時。 (根の先の周りに病気ができやすい) E乳歯の位置やかみ合わせが、将来の永久歯列育成に影響を及ぼす可能性がある時。(精密な検査が必要です) (4)処置歯(○)と健全歯(/)について上へ↑ むし歯を治療した状態が良好で、今のままの状態でよいですよというのが○印です。 又、むし歯でなく、処置もしていない健康な歯は、/線印を付けます。これは現在、歯が萌出していて、存在しますよという事にも使います。 ですから実際には、むし歯の場合、C印と/印の2つが付きます。健康診断の時にはCだけ書いておいて、後で/も付けるのです。 (5)歯肉炎(G)、歯周炎(P)について 歯をとりかこむ組織をまとめて歯周組織といいます。これは文字通り「歯の周りの組織」のことで、4つの組織から成り立っています。 @歯肉 A歯槽骨(根の周りをとりかこむ骨)、 B歯根膜(歯の根と歯槽骨をつなぐ線維)、 Cセメント質(歯根膜の線維を歯の根に固定する根の表面部分)のことです。 歯肉炎は、この歯周組織の中の歯肉だけに炎症があるときの状態です。歯肉炎の状態から悪化して、その他の歯周組織にまで炎症が及んでしまった状態を、歯周炎といい、この歯肉炎と歯周炎をまとめて歯周病といいます。 ( 図:歯と周囲の構造 ) @歯肉炎の原因は何か? 歯と歯肉の境目にたまった、歯垢中の細菌がつくりだす毒素や酵素などによって、歯肉に炎症が起った状態が歯肉炎です。 歯と歯肉の境目の歯垢中の菌などが、侵入しようとします。その侵入に対して、歯肉内の血管からたくさんの白血球が出て、それ以上侵入しないよう菌と戦います。この様に、外から侵入した刺激に対して、体の中を牢ろうとする戦いが炎症なのです。 炎症を起こすと、歯と歯肉の境目の肉が赤くなり、腫れぼったくなり、歯ブラシをあてた時に出血しやすくなってきます。この状態が歯肉炎です。 そして、出血したり、異和感があるため、歯みがきのとき歯ブラシをあてなくなって、さらに悪化させることもあります。 A歯周炎の原因は? 原因は歯肉炎と同じです。歯肉炎の状態が長く続いて改善されないと、炎症は段々歯肉以外の探部の歯周組織に進んでいきます。この状態が歯周炎(シソウノウロウのことですが、今はこの言葉をつかいません)です。 つまり、歯槽骨、歯根膜、セメント質にまで炎症が進み、歯肉の出血、腫れだけでなく、歯がグラグラし始め、次第に歯が移動したりして、かみにくくなってきます。そして結末は、歯が抜け落ちることになります。 B軽度の歯肉炎(GO)について 歯肉が少し赤くなり、腫れぼったくなっているが、歯石(後述)付着が認められず、効果的な歯みがきで治るような歯肉炎です。GOと言われたら、ていねいに歯みがきして、Gにならないよう早く治しましょう。 C歯石(ZS)って何? 歯垢が長い間たまったままになっていると、だ液中のカルシウムやリンが積もって石のように硬くなります。これが歯石です。歯石の表面はギザギザになっているので、歯肉を刺激し、炎症を悪化させますし、歯ブラシでこすっても落ちないので、歯科医院で早く取り除いてもらいましょう。大切なのは、歯垢をコントロールして、歯石を再び蓄積させないように歯みがきの方法を考えて実行することです。 D歯周病の予防について 歯周病の直接的な原因は、歯と歯肉の境目についた歯垢です。しかし、それだけの原因だけでどんどん悪くなっていくのではありません。歯周病は、食生活や生活習慣、全身の健康状態(体の抵抗力の低下)、ストレスなどが複雑に関わり合って進行していく病気です。 ですから、偏食や不規則な食生活・生活環境を正し、全身の健康を保つことが、まず大切です。その上で、効果的な歯みがきにより歯垢を取り除くように毎日心掛けることが必要です。 (6)歯列・咬合について上へ↑ @正常咬合 ( 口腔内写真 ) 参考:歯列・咬合異常の判定基準(日本学校歯科医会) //////////////////////////////////////////////////////////////////////
A不正咬合の種類 (イ)反対咬合(下顎前突も含む)上へ↑ 下の歯に対し、上の歯が外側にあるのが正常ですが、その逆にかみ合わさるものを反対咬合といいます。又、上アゴの歯並びが正常なのに対して、下アゴが前に出過ぎて反対にかまさるものは、下顎前突といいます。いずれにしても下の歯が上の歯の前にあり、「受け口」とも呼ばれています。 ( 口腔内写真 ) (ロ)上顎前突 下の歯に対して、余りにも上の歯が出っぱっているものをいいます。でも時には下アゴの成長が悪く、下の歯が中に入り過ぎて、上の歯が出っぱって見える時もあります。いわゆる「出っ歯」と呼ばれています。 ( 口腔内写真 ) (ハ)そう生上へ↑ 前後にデコボコと並んでいる(歯が前にあったり、後ろにあったりと整然と並んでいない)ものをいいます。よく前歯に見られます。八重歯もこの1つです。 ( 口腔内写真 ) (ニ)開咬 奥の歯をかんでも、前歯の上下がぶつからないですいているものをいいます。悪習慣(指しゃぶり、唇を吸う癖、舌を前へ突出させる癖)が原因と言われています。 ( 口腔内写真 ) (ホ)過蓋(かがい)咬合上へ↑ 歯をかんだ時、上の歯で下の歯が見えなくなる位かくれてしまう、深いかみ合わせのものをいいます。 ( 口腔内写真 ) (ヘ)交叉(こうさ)咬合 一部が上の歯が下の歯の外側にあり、他の一部が反対に下の歯が上の歯の外側にあり、かみ合わせが交叉しているものを言います。 (ト)正中離開 上の前歯の真ん中にすき間があるものをいいます。但し、低年齢ではアゴが成長途中なので、小さなすき間があっても異常ではありません。 ( 口腔内写真 ) (チ)歯列不正上へ↑ 歯並びが「U」の字型ではなく、途中がくびれた並び方になっていて、上下の歯がすれちがって、かみ合わないものは、歯列不正といいます。 (7)顎関節について上へ↑ 顎関節は下アゴの骨と頭の骨(上アゴの骨はこの部分です)を連結していて、この両者にくっついている数種類の筋肉により顎の運動をおこなっています。そして、上下、左右、前後に動く顎の運動を支えている特殊な関節です。なお、動くのは下アゴの骨で、上アゴの骨は頭の骨にくっついているので動きません。口を開けたり閉めたり、食べたり喋ったり、力を出すためにかみ締めたり、日常生活に顎運動はほとんど休むことなく続けられています。 顎関節異常の症状 顎関節痛(開閉筋の痛みも含む)、顎関節音、開口障害(口が開かなくなる)が3大症状です。健康診断では、痛み等があり、日常生活に支障をきたしているものは「2」、支障はないが症状があるものを「1」としています。 「1」の時は、経過観察、「2」の診断の時は精密検査、治療が必要です。 (8)その他の疾病及び異常 歯の形の異常、歯の数の異常、歯質の異常、歯の発育異常、口の中の炎症ヘルペス等です。ここでは口内炎について述べてみましょう。 口内炎 口腔粘膜(歯肉や頬肉の表面の膜)に生じた炎症性の病変で、局所的原因によるものと、全身疾患の一症状として現れる場合とがあり、発赤、びらん、潰瘍などの症状としてみられます。一部分に限られて現れた時は、舌炎とか口角炎などと存在する部分の名称をつけて呼びます。 上へ↑ |