A.むし歯についてのミニ知識
1.むし歯をつくる菌は何匹いるのですか? 歯垢の中には1mgあたり億個の菌がいます。歯みがきがじょうずにできる人は少なく、しない人は当然菌の数が多いことになります。また、みがき残しの所も菌の数が多いことになります。 2.むし歯になりやすい所はどこですか? 歯垢がたまりやすい所や歯みがきがじょうずにできない所です。 @歯と歯ぐきの境目 A奥歯などの溝 B前歯の裏側 Cとなり合った歯と歯の間 D上の1番後ろの歯のほほ側と奥側 3.どの歯が1番むし歯になりやすいのですか? 乳歯でも永久歯でも奥歯の2本が最もむし歯になります。それは奥歯は歯ブラシが届きにくいので、自分ではきちんとみがいているつもりでも、案外歯垢が残っているのです。ですから、特に気をつけて歯みがきしないといけません。 4.むし歯はいつできるのですか? 上へ↑ むし歯は寝ている間にできることが多いのです。それは、だ液の分泌がおさえられているので、歯の表面を洗い流すことができないし、舌や頬が動くことも余りないので、菌が活発に動いてむし歯をつくりやすいのです。ですから、寝る前には必ず歯みがきをしましょう。 5.どうして甘いものを食べるとむし歯になるのですか? 上へ↑ むし歯をつくる菌は甘いものが大好きです。この菌は甘いものの中に含まれる砂糖を分解して、グルカンという物質をつくるのです。このグルカンはねばねばして歯にくっつきやすく、とれにくいので、菌が歯の表面にくっついていることができるのです。だから、菌はそこで仲間をいっぱい増して、歯を溶かす酸もいっぱいつくれるのです。 歯ブラシで歯をみがくことは、このグルカン(歯垢)を落とすことになるので菌が生きて行くことができなくなるのです。また、今は人工甘味料といって、砂糖の代わりをする甘い物質を入れたものが発売されていますが、人工甘味料ではグルカンができないのでむし歯になりにくいのです。 6.むし歯菌のつくる酸の強さは? 上へ↑ 酸の強さを表すのにPHが使われます。PH7が中性、これより数字が大きくなればアルカリ性、小さくなれば酸性です。そして、小さくなればなるほど酸性度が強いことになります。 歯のエナメル質(歯の表面)が脱灰(むし歯になる)され始めるのは、PH5〜PH4位と分かっています。 これに対して、むし歯菌のつくる酸のPHはどの位になるのでしょう。 図から分かるように、ブドウ糖液(砂糖に似たもの)で洗口後、数分以内にPHはエナメル質の脱灰点以下に低下し、分位で最小PHに達した後、ゆっくりと回復します。この様子は、歯垢にブドウ糖が投与される度に繰り返しおこります。 そこで、口の中の片側だけ歯みがきした後、両側にブドウ糖を投与しますと、歯みがきした方はPHの低下は認められなかったのです。 ですから、歯みがきで歯垢を落とすと(菌も少なくなる)歯は脱灰しない(むし歯にならない)のです。 また、このことから、食事の回数、特に間食の回数が問題になります。朝、昼、夜の3度の食事と間食の度にPHが低下しているのです。 ですから、おやつをだらだら食いしたり、だ液の分泌が少なくなる睡眠前の食事(夜食)などは、歯垢中のPHの上昇がなく、むし歯の発生につながります。 7.むし歯と間食回数 上へ↑ 本来3度の食事で不足する栄養を補うための間食(おやつ)が、子供たちの「レクリェーション」という心理的な面からも必要であると考えられていますが、間食の回数、嗜好傾向、規則性がむし歯の発生に密接に関連しており、中でも回数が最も大きな影響を及ぼしています。 間食の回数が多い子ほど、また不規則に間食を取っている子ほど、多数のむし歯が発生しています。 これは間食に「甘いもの」を食べるという習慣が定着しているためで、甘いものの接触回数が直接、むし歯の発生と結びついていることを示しています。 食事と間食は子供にとって一連のものですから、毎日の生活の中に一定のサイクルをもって間食の回数と時刻を決めるとともに、甘いものの摂取をできるかぎり制限することが、むし歯を予防するためには大切です。 8.間食の条件 上へ↑ @間食は1日1回 A間食は親が決めたものを決めた量だけ 飲み物はコップにうつして、お菓子は皿に出して与える(量制限)。学年が進むにつれ、子供同士の付き合いから自分で選んで買う状況が多くなりますので、日頃から親子で歯の大切さ、歯に悪い食べ物などについて話し合っておくなど親と子のコミュニケーションが大切になります。 B清涼飲料水を水がわりにしない 炭酸飲料、乳酸菌飲料、スポーツドリンク、ジュースは酸性度が高い(多くはPH3.6以下)ことに問題があります。また、これらは砂糖の含有量が多いものが大部分です。 C砂糖摂取の制限(シュガー・コントロール) 固形物と飲み物を与える場合は、両方とも甘味食品にしない。 D代替糖(むし歯予防のための甘味糖)が入ったものを利用。 原料成分表を見ると、パラチノース、カップリングシュガー、ソルビトール、キシリトール、サンフェノン、ステビア、アスパルチームという表示がありますが、これらは酸を産生しなかったり、歯垢(不溶性のグルカン)をつくらない性質を持ってます。 Eファーストフードに注意 かまなくても食べられるものが多いため、アゴの正常な発育を促がさないだけでなく、これらと甘味飲料を一緒に食されることが多いので、むし歯の原因となります。 9.歯の寿命は? 上へ↑ 最も短命な歯は下顎大臼歯で約40年。6番の大臼歯は6歳頃に出てきますので、(この歯を失した人の平均年齢は)46歳で失くしたことになります。7番の大臼歯は12歳頃に出てきますので、52歳で失くなることになります。 また、最も長命な歯は下顎犬歯で約60年です。10歳前後に出てきますので、約70歳で失くなったことになります。 そして、失くした歯の本数(一人平均喪失歯数)をみると、50歳で約5本、60歳で約12本、70歳で約20本、80歳で約27本で、80歳では5本しか自分の歯がないことになります。 10.歯を失う理由は? 上へ↑ 歯を失う原因はいくつかあるのですが、全体的数字からみるとむし歯で失うのが約50%、歯周病で失うのが約50%と大部分を占めています。現在は歯周病で失う確率が増加しています。段々歯をみがくようになったのになぜでしょう。 むし歯・歯周病の敵、歯垢の根本的原因は私たちの歪んだ食生活や不規則な社会生活にあるようです。また、ストレスもあいまって体の抵抗力が落ちてきています。歯周病は心身の健康のバロメーターです。 私たち自らが、現代の食生活を見直し、根本的に原因を取り除く努力をしなければ、歯周病は長い年月をかけて少しずつ進行し続けるのです。人間らしい健康な生き方を考え、ていねいに歯みがきをして、80歳でも20本以上自分の歯を残し、楽しい食事の生涯としましょう。 |
B.歯周病についてのミニ知識
1.歯周病は大人の病気? 歯肉炎が小学生にも認められ、中学生頃より歯周炎の子が見られるようになり、増えてきています。歯周炎に進む前段階として、必ず歯肉炎の段階があるはずですので、ここで健康に戻しましょう。 歯周病は大人になってからの病気だと思っていると大変なことになります。 2.八戸市内児童・生徒の歯垢付着率、歯肉炎り患率 市内の全小学生のデータですが、少し歯垢が付着している:11.6%、たくさん付着している:5.8%、全体で17.4%です。 又、軽度の歯肉炎(GO)の子:8.7%、歯肉炎の子:3.0%、全体で8.8%です。 ですから、歯垢付着は6人に1人、歯肉炎り患は7人に1人になります。 市内の全中学生のデータでは、少し歯垢が付着している:18.6%、たくさん付着している:4.6%、全体で23.2%で、4人に1人です。 又、軽度の歯肉炎(GO)の子:14.5%、歯肉炎の子:7.2%、全体で21.7%で、やはり4人に1人です。 上へ↑ |
C.歯並びについてのミニ知識
1.歯並びが悪くなる原因と悪くしないために(予防法) 歯並びが悪くなる原因は、一言で言えば、歯・上アゴの骨・下アゴの骨の三者の大きさ、形、位置の相互関係の不調和です。これは遺伝的要因と環境的要因があり、前者は予防は出来ませんので、早期に矯正治療(歯並びを治す治療)をすすめします。ここでは、環境的要因による不正咬合について述べてみます。 @不良習癖(くせ) 指しゃぶり、吸唇・咬唇癖(唇を吸ったり、かんだりするくせ)、異常嚥下癖などは、上顎前突や開咬の原因になります。くせを早くやめさせるようにして下さい。指しゃぶりは、心理的問題も考慮する必要があります。 A口呼吸 慢性の鼻咽腔疾患にかかっていると、鼻呼吸ではなく口呼吸となったり、異常嚥下癖を生じ、上下前歯の前突、開咬の原因になりますので、早めに耳鼻科で治して下さい。 B乳歯と永久歯の交換時の注意点 乳歯がむし歯になり、早く抜けてなくなったり、歯冠(肉から出ている部分)が崩壊し歯の形が小さくなってしまうと、後に出てくる永久歯の萌出余地が確保できず、そう生の原因となります。又、逆に乳歯の交換の時期を過ぎても残っていると、永久歯の生える場所がなく、異所萌出の原因になりますので、普段から口の中に興味を持ち、時々のぞいて見るようにし、定期的に健康診断を受けましょう。乳歯で永久歯の歯並びが決定されると言ってよい位ですので、乳歯の大切さを自覚しましょう。 Cよくかんで食べよう!! 軟食化の時代になって、「かまない子」「かめない子」がどんどん増えています。かむことによって、歯から顎に刺激(力)が伝わって顎が大きくなります。又、かむことでかむための筋肉(口を開け閉めしている筋肉)が太く丈夫になり、これが顎を成長させるのです。顎が正常に成長しないと、顎の大きさと歯の大きさのバランスがくずれて歯並びが悪くなります。「さっさと食べなさい」と食卓で言う癖はありませんか。急がせるとかえって飲みこんでしまいます。是非「よくかんで食べなさい」と言うようにして下さい。 D料理を工夫しましょう。 食べ物の「かみごたえ」を変える調理上のポイントは、「切り方」「調理形態」「食材料」と3つあります。 (イ)切り方 小さく細かく切るよりは大きい方がかむ回数が増えます。具は大きい方が良い。 (ロ)調理形態 水分がポイントになります。一般に水気の多いものはのどごしがよく、水分の少ないものは飲み込みにくいのです。従って、水分の多い食べ物ばかりでなく、水分の少ない食べ物と交互にバランスよく作るようにしましょう。 (ハ)食材料 かみごたえ大きいものといえば、海藻、きのこ類や肉類など繊維質のもの。八戸名物イカもそうですね。繊維を切らないと飲み込めないので、よくかむことになります。他にかみごたえの大きいものは何があるでしょう。それは自分で色々食べてみるとわかると思います。 又、同じ一品料理でも、その中にかみごたえの大きい食材を少し入れることによって、かむ回数が増えるということも念頭に入れて作ってみて下さい。 2.歯並びの悪いことによる弊害 イ.見ためが悪くなる。 ロ.社会性が劣るようになる。(はずかしい→消極的になる) ハ.むし歯や歯周病になりやすい。(汚れやすく、歯みがきも上手に出来ない) ニ.消化器官(胃腸)に負担がかかる(よくかみ砕けない) ホ.運動能力がよく発揮出来ない。(力を入れる時は、歯をグット強くかむものです) ヘ.発音がうまく出来ない。(息が歯のすきまからもれる) ト.顔形が変わりやすい。(片方だけでかむ癖がついたりする) 上へ↑ |
D.その他のミニ知識
1.口臭について 口臭の原因は大きくわけて二つあります。一つは口の中に原因賀あるもの。もう一つは口以外に原因があるものです。口の中に原因があるものとしては、口の中の汚れが第一です。口の中に汚れがたまると菌の作用によって腐敗・発酵が進み、悪臭が発生します。又、むし歯や口内炎、歯周病といった病気があると、膿がたまるので悪臭発生の原因にもなります。口以外の原因としては、慢性鼻炎、副鼻腔炎、気道疾患、気管支炎などの呼吸器系の疾患、食道や胃の消化器疾患、悪性貧血、尿毒症、糖尿病といった全身疾患によるもの、薬品や食品によるもの、更に実際には臭わないのに自分で臭いと思いこんでしまう神経性の口臭もあります。 口臭の予防 @口の中を清潔にすること。 Aむし歯など口の中の病気を治すこと。 B入れ歯などを常に清潔にすること。 C全身疾患を治すこと。 2.むし歯と全身疾患の関連について 歯は顎の骨の中に根があり、根の中には血管と神経が通っていて、それによって全身の血管、神経とつながっています。そのため、歯の病気が全身に広がったり(歯性病巣感染といいます)、反対に全身の病気が歯に影響したりするのです。歯がむし歯や歯周病などにかかると、その原因となった菌が歯髄(根の中にある神経、血管などをまとめて歯髄といいます)を通って全身に広がり、全身の血管の中で菌の数が異常に増加してしまう菌血症という恐い病気や、心臓にある心内膜が細菌感染をおこしてしまう心内膜炎という病気をおこすことがあります。リュウマチ、神経痛、頭痛もおこしたりします。又、歯が痛かったり、歯がなかったり、歯の数が足りなかったり、歯並びが悪いとよく物をかみ砕けないので、胃腸に負担がかかり、胃腸の病気を引き起こすこともあります。 逆に全身の病気が歯に障害をおこしたり、口の中に全身の病原の一つの症状が現れたりもします。 3.歯の萌出と交換 乳歯の数は20本で、上下10本ずつ、左右5本ずつあります。永久歯は32本で、上下16本ずつ、左右8本ずつあります。それでは右の下の歯、乳歯5本と永久歯8本の萌出交換について述べてみましょう。(左下でも右上でも左上でも同じです) 既に気が付かれたと思いますが、5本と8本で差が3本あります。すなわち、乳歯と交換して出てくる永久歯は5本で、残りの3本は交換するのではなく、直接萌出するのです。その歯は奥の第一大臼歯(真中から6番目の歯)、第二大臼歯(7番目の歯)、第三大臼歯(8番目の歯、親知らずの歯)です。 ところで、永久歯で一番先に萌出し顔を出すのはどの歯だと思いますか。それは6番目の第一大臼歯で乳歯と交換するのではなく、5番目の一番奥の乳歯の後ろに直接6才頃に萌出します。それから、その前に並んでいる乳歯5本と永久歯5本が交替するのです。例えば、10cmの直線があります。この両端に壁があって動かないとします。そして、この壁の中の10cmの所に、直径2cmの50円玉を並べるとします。10cmの所に2cmの50円玉はぴったり並びますが、もし9cmしかなければ、4枚しか並ばず、1枚ははみ出て並ぶことになります。 そうです、壁が第一大臼歯、50円玉が歯、10cmが顎の大きさを表わしています。ですから、第一大臼歯の萌出位置と顎の大きさが重要なのです。乳歯がむし歯になり小さくなったり(隣の歯とぶつかっている所がむし歯になって欠けると、その分隣の歯がまたぶつかろうとして移動するため、むし歯の歯の幅が小さくなる)早く乳歯が抜けてなくなると、第一大臼歯は正常な位置よりも前の方に萌出するため、乳歯と永久歯が交換できる顎の大きさが狭くなります。 むし歯になったら早く治しましょう。そしてよくかんで食べて顎が正常に発育するようにしましょう。乳歯はすごく大切な歯なのです。 @ 歯はどうして生まれるの? 赤ちゃんが、まだおかあさんのお腹の中にいる時に、乳歯と大部分の永久歯の歯胚という歯の芽ができます。乳歯の歯胚は妊娠7週から10週の間にできます。大部分の永久歯(5本)も妊娠3ケ月から出生時までにできます。あと2本の永久歯は出生時より生後9ケ月までに歯胚ができます。 又、これらの歯の重要な成長(石灰化)は乳歯は妊娠4ケ月から6ケ月より始まり、永久歯は出生時から生後2年までの間に始まります。従って、妊娠中にお母さんがどんな食物(栄養)を取っていたか、生後赤ちゃんにどんな食物(栄養)を与えたかが歯の歯質の善し悪しに関係するのです。 勿論、急に歯に良い食物を多くとっても、体がそんなに受け付けてくれませんから、日頃からよく考えて(栄養と栄養素)食事をすることが大切です。 A 歯はいつ完成するの?いつ萌出するの? 歯の形成は、歯冠部(通常、歯グキから顔を出している部分)と歯根部(歯グキに埋まっている部分)に分けて考えます。そして歯根部が完成して、始めて歯が完成したことになります。
( 表 )
表から分かる通り、歯冠部は歯グキの中の顎の中で完成します。それから萌出します。
それに対して歯根部は萌出後、1〜3年後に完成(歯の根の形が完全にできる)します。従って萌出後まもなく、大きいむし歯にすると歯の中(根の中も)の治療が必要になります。まだ完成していない根の中の治療は難しいので、将来長持ちしないなどの影響がでますので、自ら定期健康診断を受けるようにし、むし歯に気付いたら早目に治療しましょう。 上へ↑ |