「メタボリックシンドロームをご飯と青魚で防ぎましょう」
八戸市総合健診センター 虻川 輝夫
日本では,ここ数十年,動物性脂肪の摂取が増えて,米の消費量が減るという食文
化の変化がおこり,メタボリックシンドロームが増えました。40歳以上の男は2人に
1人,女は5人に1人が有病者,予備軍であります。寝たきりになる主な原因は脳血
管疾患,転倒骨折,認知症でありますが,動脈硬化の予防のための生活習慣で防ぐこ
とが可能であります。家族類型別世帯数の推移をみますと,一人暮しが核家族をぬい
て増え続けており,高齢者の行く先は一人暮しか,老夫婦のみ暮しということになり,
いつまでも自立できる元気で長生きが強く求められる時代であります。約100年前オ
スラー先生は,人は血管とともに老いる,健康に老いるには血管を若く保つのがポイ
ントと述べております。如何にして動脈硬化の発症,進展を防ぐかが,国の重要課題
になっております。糖尿病は万病の元であり,アルツハイマー病の危険性は4.6倍,
“がん”死亡の危険性は3.1倍であります。早寝,早起き,朝ごはんは健康を維持す
る上で基本的な生活習慣の一つでありますが,この習慣は乱れております。農林水産
省も朝ごはんの大切さをアピールしております。ごはんが何故,健康食であるかが話
の中心でありますが,その前に,青魚とは背が青い魚のことでイワシ,サンマ,サバ
などであります。青魚にはエイコサペンタエン酸という脂肪酸が多く含まれており,
中性脂肪を減らし,動脈硬化予防に有効であることが確認されており,主食は米で,
主菜は肉ではなく魚がよいということになります。
高血圧,糖尿病,高脂血症を個々に管理しても,動脈硬化予防に限界があり,程度
が軽くても重積すると危険度が増すというのがメタボリックシンドロームの概念で,
その上流に内臓脂肪蓄積があるというのが診断基準です。
私達の倹約遺伝子は縄文人と同じで,飽食と運動不足によって生活習慣病になり易
い体質です。欧米人は狩猟民族ですが日本人は農耕民族ですので,飢餓にそなえて体
に脂肪を貯える体質でないので,欧米型の食文化は日本人を肥満にし,糖尿病をもた
らします。50年前と今とで摂取エネルギーは変わっておりません。変わっているのは
脂質の占める割合が増えて,自動車の保有台数が増え,糖尿病が増え,米の消費量が
減って,肥満が増え続けているということです。主食をごはんできっちりとっている
人は脂質異常が少ないことも事実であります。
厚労省,農水省で作成した食事バランスガイドでも,主食を多く,次に副菜を多種
とって,次に主菜となるのですが,今の食事型は肉,脂肪を中心とした主菜を多くと
っており,ごはんの良さを見直さなくてはなりません。
咀嚼とごはん食で体重が減少するしくみですが,嚼む運動は脳での神経ヒスタミン
というホルモンを分泌し,満腹中枢を刺激して,満腹感を引き出し摂食量を減らしま
す。ごはんはパンや麺と違って嚼んで食べる食品です。肥満を防ぐ食生活のポイント
は早食いしないで,ごはんと嚼み応えのあるおかずでよく嚼んで食べることを続ける
工夫をすることです。抗動脈硬化作用のあるアディポネクチンを増やす食材に大豆た
んぱくがあります。納豆ごはんに豆腐のみそ汁というのが最高の朝ごはんになります。
身土不二という言句があります。人の体(身)と土(環境)とは一体であり人は生
まれ育った地元のものを食べるのが体に一番よいということで,三里四方でとれたも
のを食べていれば,長寿延命は疑いなしということです。
ごはんを主食とした日本型食生活でメタボリックシンドロームを予防しましょう。