「目を大切に 中高年に増えている緑内障について」


馬場町眼科クリニック 高橋 奈美子


 緑内障といえば「失明につながる病気」というイメージがとても強いのが特
徴です。今緑内障は早期発見・早期治療によってかなり視機能を維持できるよ
うになって来ました。そこで今回は「緑内障はどういう病気か」「どんな事に
気をつければ良いか」を中心にお話させていただきました。

 最近の疫学調査で日本人の40歳以上の17人に1人が緑内障であり,このうち
の約1割しか治療を受けていないということが明らかになりました。緑内障は
まだ中途失明原因の第2位(1位は糖尿病網膜症)です。なぜ緑内障になって
いる事に気づかないのでしょうか。それは初期には自覚症状がほとんどないか
らです。また緑内障の進行は長い時間をかけてゆっくりと進行するため症状が
出てきても気づかない事が多いのです。緑内障の自覚症状としては時刻表の字
が追えなくなった,パソコンの画面上の矢印が時々消えてしまう,運転してい
て標識や信号に気づくのが遅れるなどが挙げられます。

 緑内障は眼圧上昇や視神経の循環障害などによって視神経が障害を受け,視
野に異常の来る病気と定義されています。緑内障を診断するためには1眼圧検
査,2眼底検査,3視野検査が大事になってきます。先に述べた疫学調査によ
って日本人の緑内障は正常眼圧緑内障が圧倒的に多いことが明らかになったた
め,眼圧検査の重要性は以前より少なくなってきましたが,やはり必要な検査
です。眼底検査で視神経乳頭陥凹を検出します。陥凹の大きさ・形・左右差,

それに伴う乳頭出血,神経線維層欠損などの有無をチェックし診断します。視
野検査で緑内障性視野変化の有無を調べます。これらの検査を総合し緑内障の
診断および病期の判断をします。緑内障の治療で重要な事は何よりもまず眼圧
を下げ,これ以上視神経が障害されないようにし,視野障害が進行しないよう
にすることです。しかし診断がついてもすぐ治療が始まらない場合もあります。
治療前の眼圧の経過や,視野障害の程度と眼圧の関係を把握し,その方に合う
治療法を探していきます。緑内障は治癒させる事が出来ない疾患なので治療目

的は進行を防ぐ,つまり現状維持ということになります。そのためにも早期発
見が大切なのです。治療が始まると半永久的な治療が必要になるため,診断が
ついた後いつ治療を始めるかという見極めも大事になります。たとえば眼底検
査からは明らかに緑内障の形が出ているがまだ視野に全く異常が出ていない場
合など,治療をしないで経過観察のみをしていく場合もあります。治療の第一

選択は点眼薬による薬物療法です。点眼薬1種類で治療を始め,効果が充分で
なければ点眼薬を変更したり,作用の違う薬を追加して2〜3種類組み合わせ
たりします。点眼薬を多種使っても眼圧が下がらない,視野の進行が止まらな
い時や,点眼薬による副作用が出現し,点眼の継続が難しい時には,レーザー
治療や手術が行われます。

 緑内障では健康的で無理のない規則正しい生活を送ることが基本ですが,何
をしなければならない・これをしてはいけないというものはありません。また
眼を使いすぎたり細かいものをたくさん見たりすると緑内障が進みやすくなる
と思われている方が多いのですが,眼を使いすぎて緑内障が進むということは
ないといわれていますので眼鏡等を適正に使用すれば,読書も手芸もかまいま
せんと説明しています。

 皆さん,健診を進んで受け緑内障を早期発見できるようにしましょう。