「心筋梗塞について」
荻生内科医院 荻生 直徳
![]()
厚生労働省は21世紀の我が国を,すべての国民が健やかで心豊かに生活でき
る活力ある社会とするため,「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本
21)」を推進しています。これは壮年期死亡の減少,健康寿命の延伸及び生活
の質の向上を実現することを目的として,「健康日本21」のなかには1.栄養・
食生活 2.身体活動・運動 3.休養・こころの健康づくり 4.たばこ 5.アル
コール 6.歯の健康 7.糖尿病 8.循環器病 9.がん,などがとりあげられて
います。今回はソ循環器病,特に生活習慣病といわれる虚血性心疾患の心筋梗
塞の話をします。
1.「心筋梗塞」ってどんな病気
心臓の栄養血管である冠動脈が閉塞し結果,心筋が壊死をおこしてしまう病
気です。心筋壊死によってポンプ失調(うっ血性心不全),致死性不整脈,心
破裂を起こして急死することもあります。人間の体を車に例えると心臓はエン
ジンになります。心筋梗塞はエンジンにガソリンを供給しているパイプ(これ
が冠動脈)が詰まってエンジンが壊れてしまうことと同じです。
2.症状
突然の胸痛,胸部圧迫感。痛いといってもチクチク・ピリピリといった痛み
ではなく,重いものをのせられるような痛み,焼けるような痛み,握りつぶさ
れるような痛みや圧迫感,と表現されることが多いようです。また冷汗や吐き
気を伴う場合もあります。
3.治療(虚血性心疾患全般)
○薬物治療
○カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術,ステントなど)
○外科的治療(冠動脈バイパス手術)
急性心筋梗塞の急性期治療は,閉塞した冠動脈の血流をいかに早く再開(再
灌流)させることが出来るか否かにかかっています。現在,急性期再灌流療法
はバルーンやステントを用いたカテーテル治療が主に行われています。その後,
ポンプ失調への対応,致死性不整脈の監視,心破裂ケアなど集中治療室(ICU)
での治療を経て一般病棟でリハビリをします。
4.予防
心筋梗塞などの生活習慣病の予防として以前から言われているのは,高血圧,
高脂血症,糖尿病,喫煙,肥満,ストレスなどの危険因子の治療や改善です。
さらに最近注目されているのは,メタボリックシンドロームという概念です。
日本の企業労働者12万人の調査では,軽症であっても「肥満」,「高血圧」,
「高血糖」,「高トリグリセリド(中性脂肪)血症」,または「高コレステロー
ル血症」の危険因子を 1 つ持つ人は心臓病の発症リスクが 5 倍, 2 つ持つ
人は10倍, 3 〜 4 つ併せ持つ人ではなんと31倍にもなることがわかりました。
メタボリックシンドロームは,動脈硬化の危険因子である「肥満」,「高血圧」
,「高血糖」,「高脂血症」を重複して発症していることがあります。この人
達は心筋梗塞や脳梗塞になり易いのです。以下に診断基準を記します。
<メタボリックシンドロームの診断基準>
●ウエスト周囲計(内臓脂肪蓄積),男性≧85cm,女性≧90cm
上記に加えて以下のうち 2 項目以上
●高中性脂肪血症 ≧150mg/dlかつ/または
低 HDL コレステロール血症 <40mg/dl
●収縮期血圧 ≧130mmHg かつ/または
拡張期血圧 ≧85mmHg
●空腹時血糖 ≧110mg/dl
心筋梗塞や狭心症などの治療は年々進化しています。しかし,これからは心
筋梗塞などの生活習慣病は,病気になってからの治療よりも,出来るだけ早く
積極的に予防策をとるべきであると考えます。
![]()
