「糖尿病のおなはし」


金吹沢診療所 於本 章


 厚生労働省の調査結果によると,わが国では1997年から2002年の 5 年間で,
糖尿病予備群と糖尿病の疑いが濃厚の人と合わせて約250万人増えています。
糖の異常がある人は,わが国の成人の約 6 人に 1 人の割合に相当します。ま
た,糖尿病患者さんの約95%は 2 型とよばれるタイプで,患者さんの約半数の
方が糖尿病と気づいていません。

 日本人の糖尿病の多くは 2 型糖尿病といわれるものです。その成因となる
ものは,遺伝因子と環境因子であると考えられています。これらは複合的にイ
ンスリン抵抗性や肥満,過食,運動不足,ストレスなどとなって糖尿病が発症
すると考えられます。

 では何を基準に糖尿病と診断するのでしょうか。空腹時血糖値が126mg/dl以
上,食後血糖値,ブドウ糖負荷試験 2 時間値が200mg/dl以上あれば,糖尿病
が強く疑われます。この値が別の日にも確認されれば糖尿病と診断します。

 しかし今,大事なことはいわゆる糖尿病予備群といわれている人たちに注意
をしていただきたいことです。食生活の変化とともに,肥満,高コレステロー
ル血症,糖尿病予備群などが増加しています。肥満のある糖尿病予備群の人は,
生活習慣を改善することで,何もしていない人に比べて,糖尿病の発症のリス
クを約60%抑えることができるという報告があります。その生活習慣改善の方
法の一つとして運動療法が効果的です。手軽にできる運動としてはウォーキン
グがあります。またこれから冬になりますが,ウォーキングができないときは
家の中で体操をしましょう。テレビ体操を試してみてください。

 また,九州の久山町で行われた研究では,糖尿病の人は,糖尿病になってい
ない人よりも,脳梗塞や心筋梗塞などの心血管系疾患の危険が約 3 倍といわ
れています。糖尿病の人では,血糖をコントロールすることによって,心筋梗
塞などの大血管障害や網膜症,腎症,神経障害などの細小血管障害の危険を減
少させることがわかっています。

 さて,糖尿病の治療は昔から変わっていません。食事療法と運動療法が基本
です。それぞれ,患者さんにあった食事内容と運動内容が示されますが,その
うち運動療法は前述したように歩くことがいいと思います。食事療法+運動療
法で不十分な場合に薬物療法を考慮します。薬物療法には経口剤とインスリン
注射がありますが,これらはたくさんの種類と組み合わせがありますので主治
医とよく相談をして下さい。

 八戸市では平成15年 6 月,「健康はちのへ21」を策定しました。その趣旨
は,「市民一人ひとりが健やかな命と心を育み,豊かな生活の実現を目指し,
市民全体の健康づくり運動を進めていくために」というものです。「健康はち
のへ21」は 9 項目を挙げていますが,その 7 番目に糖尿病があります。そこ
では市民のチャレンジ目標として以下の 3 点を掲げています。

1 .年一回はすすんで健康診査を受けます。
2 .糖尿病について正しい知識をもちます。
3 .食べ過ぎをさけ,バランスのよい食生活と 運動で糖尿病を予防します。

 生活習慣病といわれる糖尿病ですが,ちょっとした工夫で予防ができ,ある
いは進行を抑えることができます。また,これらの積み重ねで医療費の節約に
もつながるのではないかと思います。