「生活習慣病を防ぐために」
向井田胃腸科内科医院 向井田英明
○生活習慣病とは
食習慣,運動習慣,休養,喫煙,飲酒等の生活習慣が病気の発症・進行に
関与する疾患群であり, 3 人に 2 人はこの生活習慣病で亡くなっている
。生活習慣病の予防には健康増進・発症予防の一次予防,早期発見・早期
治療の二次予防,機能維持・回復の三次予防があるが,医療費抑制の点か
らも重要なのが一次予防である。
○代表的な生活習慣病
がん,動脈硬化性疾患である脳卒中と心臓病,動脈硬化の危険因子である
糖尿病,高血圧,高脂血症,高尿酸血症などがある。
○糖尿病について
糖尿病では非糖尿病に比べ動脈硬化性疾患を
2 〜 4 倍発症しやすい。平成14年の厚生労働省の糖尿病実態調査による
と糖尿病が疑われる人740万人,糖尿病の可能性を否定できない人880万人
,合計すると1,620万人であり,これは成人6.3人に一人となる。平成12年
度の国民医療費では糖尿病は 1 兆1,155億円と第 4 位である。このよう
に数の多い,お金のかかる糖尿病をなんとかしようとのことで,2005年 2
月に日本医師会,日本糖尿病学会,日本糖尿病協会は共同で,糖尿病の発
症予防,早期発見,合併症予防を促進する目的で「糖尿病対策推進会議」
を設立した。
○糖尿病は予防可能か
DPP(Diabetes Prevention Program)が2001年に報告された。DPP の対象
は25歳以上,BMI 24 以上の IGT(耐糖能異常)3,234名であり, 1 )生
活習慣改善群( 5 %の減量と 1 日30分のウォーキング) 2 )メトホ
ルミン群(850-1,700_/日) 3 )プラセボ群の 3 群に割り付けて平均
2.8年経過をみた。糖尿病累積発症率はプラセボ群29%,メトホルミン群
22%,生活習慣改善群14%と生活習慣の改善で糖尿病発症が約50%減少し
た。
2 型糖尿病の原因は遺伝因子+環境因子(食べ過ぎ,運動不足,ストレ
ス,肥満など)である。遺伝因子は変えることはできないが,環境因子は
変えることはでき,DPP で示されたように環境因子の変更,つまり生活習
慣の改善により糖尿病発症はある程度防ぐことは可能と思われる。
○糖尿病を予防するためには
食べ過ぎ,運動不足に注意して肥満を改善する。ストレスを避けたり,う
まく解消する。つまり健康な生活をおくることである。
具体的には食事については,腹七分目(適正なカロリー),食品の種類は
30種類以上(バランスのよい食事),脂質は控えめにする,朝食,昼食,
夕食を規則正しくとる,体重を定期的に測定するなどである。運動につい
ては 1 日30〜60分,最大運動の60%程度の運動を週 3 回以上することで
ある。健診を受け早期発見することも大切で,家族歴のある方は特に注意
が必要である。
○高血圧,高脂血症,高尿酸血症
運動については,糖尿病と同じである。食事についても基本は同じである
が,高血圧では塩分制限( 1 日 6 g 以下),高コレステロール 血症で
はコレステロール摂取制限(300_/日),高中性脂肪血症では糖質,アル
コール摂取制限,高尿酸血症ではプリン体,アルコール制限が加わる。タ
バコについては体に良いことは全くないので,禁煙することが必要である
。