「肝心かなめ 〜肝炎の最新治療〜」
高木クリニック 高木伸也
1.ウイルス性慢性肝炎を理解するためのポイント
本疾患を理解するポイントとしては, 1 )感染症であり他人への感染源
となりうる 2 )日常生活を行うための肝機能は保たれている 3 )病状
が進行すれば肝硬変になる 4 )肝がん発生のリスクがある 5 )炎症の
程度は変化し,急にひどくなることがある 6 )炎症の程度により生活の
制限が必要となる などがある。
2.疫学
現在日本全国で,肝疾患患者総数は約250万人,慢性肝炎は130〜200万人
,肝硬変は35万人,肝がん 3 万人と推定されている。肝がんによる死亡者
数は年々増加しており,がんによる死亡者のうち,男性で第 3 位,女性で
第 5 位となっている。
3.慢性肝炎(肝がん)の原因
慢性肝炎の原因としては,C 型肝炎ウイルスによるものが70%と最も多く
,以下 B 型肝炎ウイルス20%,B + C 5 %,アルコール 1 %,その他 5
%となっている。
4.C 型肝炎の自然経過
C 型急性肝炎は,症状は軽いが,慢性化率は80%と高率である(原因とし
ては,1989年以前は輸血が多かった)。劇症化はごく稀である。C 型慢性肝
炎の多くは無症状で進行するが,自然経過は個人差が大きい。自然経過に関
与する因子(悪化因子)としては,年齢(40歳以上)・飲酒・性別(男性)
が重要である。一般に初感染から肝硬変までの期間は20〜30年,肝がんまで
は30〜40年と言われるが,初感染の年齢が高いほどその年数は短縮する。
5.C 型慢性肝炎の診断
C 型慢性肝炎と診断するためには,基本的には C 型肝炎ウイルス(HCV)
の存在と,肝機能異常(GOT/GPT(AST/ALT)の増加)があればよい。HCV の
検査は,HCV 抗体検査(1989年〜)があり,確認及び治療のためには HCV-
RNA 検査を行う。2003年から HCV 抗原検査が可能となった。
6.肝炎の進行や肝がんを調べる検査
肝炎の進行や肝がんを調べる検査としては,
1 )GOT,GPT(毎月) 2 )血小板数,血清アルブミン,プロトロンビン
テストなど 3 )肝がん腫瘍マーカー(α-フェトプロテイン,PIVKA-U)
( 3 か月に 1 回) 4 )超音波検査( 3 か月に 1 回) 5 )CT 又は
MRI 検査(年 1 回) 6 )肝生検(必要時)などがあり,これらを組み合
わせて総合的に判断する。
7.肝炎ウイルス検診
2002年度から国の事業として肝炎ウイルス検診が始まった。40歳以上が対
象で,2006年度までの 5 年間で終了の予定である。2002〜2004年度の報告
では,全国で HCV 陽性者は1.6,1.3,1.0%であり,八戸市では陽性率0.7,
0.5,0.5%と全国的に比し低率であった。一方 B 型肝炎ウイルスの陽性率
は,全国 1 %程度で,八戸市 2 %程度と八戸市の方が高率であった。
8.C 型慢性肝炎の治療
治療には,原因療法と対症療法があり,原因療法は HCV の排除を目的と
し IFN(インターフェロン),リバビリンが用いられ,対症療法は肝炎の鎮
静化を目的とし強力ネオミノファーゲン C,ウルソ,瀉血療法などが用いら
れる。
IFN 治療の対象は C 型慢性肝炎で,70歳以上の方,重篤な循環器・腎疾
患などの合併症のある方,妊婦などは対象外となる。最近,新しい IFN と
してコンセンサス IFN や PEG-IFN などが発売され,特に PEG-IFN・リバビ
リン併用療法は従来の IFN 治療が効かないタイプの患者さんにもかなり効
果があり期待されている。
9.B 型慢性肝炎の治療
治療には,IFN,ラミブジン,ステロイド離脱療法を単独あるいは組合わ
せて行うが,C 型よりは IFN が効きにくく治療が難しい。