「子どもがかかりやすい病気と手当」


橋こどもクリニック 高橋 秀知


 小児科を受診する子どもの9割はいわゆる「かぜ」です。子どもは年間平均
して乳児4回,1〜5歳6〜7回,5〜6歳2回,6歳以上1〜2回かぜをひ
くといわれています。かぜの病原菌はほとんどがウイルスで,その種類は200
種以上あり,次々と違うウイルスで感染を繰り返すこともあります。特に最近
は乳児期から保育園に行くことが多く,かぜに対する免疫ができていない乳児
はいきなりウイルスのシャワーを浴びることになり,かぜが治らず長びくこと
が多くみられるようになりました。

 まず熱がでた時の手当ですが,熱は体を守る防御反応であり熱を下げると治
るまでの時間が長引くといわれています。解熱剤は原則として必要ありません
が,1)頭が痛くて苦しがっている 2)熱が高くて眠れない 3)以前に熱
性けいれんをおこしているなどの場合は解熱剤を使ってかまいません。熱に対
して強い子,弱い子の個人差があります。熱で知っておいてほしいことは1)
熱の高さと病気の重さは関係ない 2)熱だけで脳に後遺症が残ることはほと
んどない 3)生後 3 か月以内での38度以上の熱は早く小児科を受診する 
4)高熱が3日以上続く時は元気があっても小児科を受診する 5)夜間に熱
がでたというだけであわてて病院に駆け込む必要はなく,まず機嫌がいいか,
よく眠れるか,遊んでいるか,泣き方がどうかなど全身状態をみていいようだ
ったら一晩様子をみて翌日受診してもいい,ということです。

 熱性けいれんは6か月〜6歳,特に1〜2歳で発作を起こしやすく100人に
5人位の割合でみられます。発作時の対処法は1)安全な所に寝かせ衣服をゆ
るめる 2)口の中に指やスプーンを入れない 3)顔を横に向かせ吐いた物
を誤飲しないようにする 4)できれば時間を計り状態を観察することです。
発作は長くても1〜2分のことが多いのですが,10分以上続くとか一旦治まっ
てもまた短時間で繰り返す場合にはすぐに診察を受ける必要があります。

 次に咳と鼻水の場合ですが,まず室内の環境を整えて下さい。きれいな空気,
適度な湿度が大切です。咳も鼻水も体に入ってきたウイルスや細菌を体外へ出
そうとする生体防御反応です。水分を多めに摂ったり,上体を少し高くするこ
とによって痰を出しやすくすることができます。

 次に下痢や嘔吐ですが,乳幼児は体重1kg当りの水分が大人の3倍以上あり
嘔吐や下痢が続くと脱水になりやすいので,十分に水分を補給する必要があり
ます。口唇,舌の乾きやオムツの重さなどから脱水状態がわかりますので注意
して見て下さい。嘔気が強い時には無理に水分を与えず,治まってから極く少
量から与えます。一度に欲しがるだけ与えると胃腸が急に動きだして嘔吐して
しまいます。水分は乳幼児用のイオン飲料や湯冷まし,番茶などがいいでしょ
う。

 腹痛の場合は腸重積と急性虫垂炎に注意が必要です。ただ腹痛は乳幼児では
訴えがはっきりしないことが多いので,普段と泣き方が違うとか様子がおかし
いとかということで来院します。この2つの病気は早く診断しないと手術しな
ければならなくなるので,血便や繰り返す嘔吐・腹痛や顔色がすごく悪い時に
は直ちに医療機関を受診して下さい。

 その他夏かぜとして手足口病,プール熱,ヘルパンギーナについて説明し,
予防法としては1)うがいと手洗の習慣 2)部屋を冷やしすぎない 3)寝
冷えに注意 4)規則正しい生活(早寝早起) 5)バランスのよい食事を摂
ることなどをお話ししました。