「生活習慣病を防ぐために」


鈴木内科医院 鈴木 竹一


 ここでは,主として冠動脈疾患の原因となる高脂血症について書くことにす
る。

 一口に言って,高脂血症というのは1 LDLC が高い2 TG が高い3として1
と2の両方とも高い4 HDLC が低い――ことである。動脈硬化をひきおこすの
は1であるが,今ではそれのみにとどまらない。現在最も注目されているメタ
ボリックシンドローム(代謝症候群)は,心筋梗塞や脳梗塞になりやすい生活
習慣病といわれているが,それは肥満・高 TG 血症・高血圧・耐糖能低下の 4
つの組み合わせによる。そこまで至らなくても,食後の高 TG 血症が何時ま
でも残る人で HDLC が低いと,動脈硬化をおこすともいわれている。さらに,
高 TC 血症だけで判断すると,治療があまり必要でない高 HDLC 血症の者まで
治療することになるともいわれている。逆に,TC が正常で LDLC が高く,か
つ HDLC が低い症例もある。

 日本では2003年の調査で,冠動脈疾患の代表である急性心筋梗塞による死亡
率(年齢調整)は,男性で人口10万当たり27.9,女性12.8人だった。

 抗脂血療法のターゲットはいうまでもなく,心筋梗塞の予防にある。

 一般的には,心筋梗塞になりやすい事項(危険因子)としては1心筋梗塞の
家族歴がある人 2高 LDLC 血症3糖尿病(耐糖能異常を含む) 4高血圧5
タバコ6低 HDLC 血症F加齢の 7 つが主要なものとされている。さらに,危
険因子が複合すると危険性は一層高まることになる。
 女性は男性に比べ,もともと心筋梗塞は少ない。この病気による死亡率は,
75歳までは男性の半分以下である。女性ホルモンのエストロゲンにはコレステ
ロールの上昇を抑え,血管を拡張させる作用があるためである。日本での約70
0人の心筋梗塞のデータを分析し,どのような場合に発症の危険が高いかを調
べたら,女性では高血圧があると7.8倍高くなり,低 HDLC で3.4倍,糖尿病2.
4倍だった。これらの危険因子を併せ持った女性の場合,治療の必要性が高い
と結論されている。しかし,閉経後の単にコレステロール値が高いだけで薬物
療法をすべきかどうかはまだ議論が多い。

 食事指導として,今でも卵のようなコレステロールの多い食品や,肉など動
物性脂肪を控え植物性油やマーガリンを多くとるよう指導されることが多い。
しかし最近,このやり方ではかえって心筋梗塞の発生率も死亡率も増加するこ
とが,国の内外で発表されている。主因は植物油に含まれるリノール酸(不飽
和脂肪酸)の過剰摂取による。そのため,血液の凝固能を高め動脈硬化を促進
するという。日本脂質栄養学会ではすでにリノール酸摂取量を減らす栄養指導
を進めている。「魚を週 3 回以上食べる。てんぷらや揚げ物は控え目に」と
勧められるようになってきた。このような指導は,スタチン治療より重要だと
提言している人もいる。

 最後に,健康食品や漢方薬などのサプリメントについて少しふれておきたい。
コレステロール低下作用などが優れているものがあるが有害なものもある。も
し受診する時があれば,使用品名をメモに書いて持参することが必要である。
ドリンク類も例外ではない。