「子どもの気になる症状と話題あれこれ」
さしなみ小児クリニック 差波 司
1.緊急度から見た小児の症状の観察とケア
1.呼吸困難
ゼーゼーして苦しそうだと気管支喘息の発作の場合が多い。「ケンケン犬が
吠えるような咳をする」場合は喉頭炎の可能性があり,急に呼吸困難になるこ
ともある。年齢の低い子どもほど,あるいはチアノーゼ症状があれば緊急度が
高い。また,急な呼吸困難の場合,特に乳幼児では気道異物の可能性もあるの
で注意を要する。気道の確保(頭部後屈と救急処置を解説)を優先すること。
2.意識状態
意識レベルが悪いほど緊急である。原因は単に病気経過が長く消耗している
場合や,脱水,腸重積,髄膜炎,脳炎,脳症,脳出血など様々だが,脳の問題
のときは「けいれん」を伴うことが多い。
3.発熱
小児救急のトップを占める。救急か否かは,発熱の持続と他の症状(けいれ
ん等)があるかどうか,あるいは「ぐったりしている」「意識状態がおかしい」
「生後間もない」「呼吸困難」などがある場合である。発熱だけなら冷やして,
水分を多めに与えて様子をみていい。なお,乳幼児は37.5℃までは平熱と考え
てよい。
4.不機嫌
泣き止まない,どこか痛がっているよう,何となくおかしい。原因として乳
児では「夜泣き」が多く,まずは気分転換を図り,様子をみるのがよい。髄膜
炎,腸重積などが隠れていることはあるが,飲みが悪いとか嘔吐,下痢,発熱,
顔色不良などの症状を伴っているか,よく観察すること。残念ながら夜泣きの
原因はわかっていないので,いろいろな泣きやませのテクニックを試してくだ
さい。
5.腹痛
腹痛のみの症状だと,「便秘」が最も多い。嘔吐や下痢,血便,発熱などの
症状が参考になり,虫垂炎,腸重積,腸閉塞(イレウス)などが緊急となる。
しかし,真の救急的腹痛は頻度としては少ない。
6.嘔吐・下痢
嘔吐が長く続いたり,血便を伴いぐったりしているようなら腸重積が疑われ
る。乳幼児で体重 1 sも減るほどの激しい下痢は,全身状態もぐったりして
いることが多く,脱水状態で緊急の輸液の必要がある。白色便の場合はロタウ
ィルスの可能性があり,便の回数が多いと脱水に注意を要する。
7.けいれん
あわてず観察(けんれんの様子,持続時間)をすること。原因として,熱性
けいれんがもっとも多く,普通 2 − 3 分で治まるが,10分位しても止まない
ときは緊急。けいれん中に舌をかむことはほとんど無く,箸や指を無理に口に
入れないこと。また,けいれん中に呼吸が止まったようになるが,揺り動かし
たりせず安静を保つ。できれば気道の確保のために顔と体を横向きに寝かせる
こと。
8.誤飲(たばこ)
気付いた時点で吐かせる(用手催吐・水やお茶など飲ませないで)こと。ニ
コチンの急性致死量は幼児で10−20rと言われ,市販のたばこで 1/2〜1 本で
あるが,たばこからニコチンが溶出するには時間がかかる(15分でわずか 3
%程度)。しかし,ニコチンが溶けた液を飲むと約60分以内に吸収され,その
症状はまず吐き気と嘔吐である。
2.その他の話題
1.母乳とかぜ,薬の移行について
2.反抗期とは?
3.言葉の遅れ(長時間のテレビ・ビデオ視聴の影響)について
4.自閉症と ADHD(注意欠損多動症候群)を疑わせる徴候について
以上をスライドを用い簡単に解説した。