「動脈硬化を予防するために」
八戸市総合健診センター 虻川 輝夫
キーワード:肥満症 中庸の思想
人は血管とともに老いるともいわれており,健康で長寿を全うするには動脈
硬化の予防が大切であります。2002年の国勢調査によりますと2007年には核家
族より一人暮らし世帯が多くなり,高齢化社会は一人暮らし社会となり,自立
で老後の生活を送ることが求められます。
要介護の主な原因は脳血管疾患でありますが,脳血管障害がありますと痴呆
を合併したり,転倒し易いため骨折で寝たきり状態になることも少なくありま
せん。
脳血管疾患は動脈硬化によって発生します。動脈硬化の主な危険因子は高血
圧,高脂血症,糖尿病でありますが,その上流に肥満症が位置していることは
よく知られており,すべて節度ある生活習慣で予防できる病態であります。
不老長寿は古今東西を問わず人類の願望であり,病と死は最もおそれられた
もので人の悩みもそこから始まります。人も自然の一員であり自然と一体です
から天寿があり,生生流転であります。理想的長寿は痴呆にもならずに自立し
て天寿を全うすることで人生の質も常に念頭において養生しなくてはなりませ
ん。
いかなる病気も発生を察知して防止策を講じればこれに優るものはなく東洋
では予防医学が最も大切な医療と考えられております。“聖人は己病を治さづ
して未病を治す”といわれ予防専門医が最も上位にランクされております。中
国の古典の黄帝内経でも生活の乱れをいましめております。
中国の思想をつらぬいている根源的な考え方に陰陽の概念があり,医学にも
応用されております。すべての現象,物質には相反する二つの要素,陰と陽よ
りなっており,人の命は陰陽の合することによって生じ,死は陰陽の分離であ
り,病は陰陽の不調和であるとしました。人の陰陽の調和の乱れを起こさない
ような生活習慣が未病や病気を予防するコツとなります。医食同源という思想
がありますが病気を治す時は食事療法は欠かせないし,健康を保持する上で食
養生は重要になります。心身一如といい,心と身は不可分で精神の不安定は身
体に大きく影響し,また,その逆もありストレスは動脈硬化の原因にもなりま
す。
虚と実は漢方の診断で最も重要な概念の一つですが,虚とは中がうつろなこ
とで疲れ易く,食欲がなく医者や薬と縁の切れない人で意外と長生きしている
が生活の質が落ちておりますので本当の健康とはいえません。実とは中がつま
っている状態で固ぶとりで血色がよく一見,健康で元気そうですが,疲れてい
ても疲れを感じないため突然,脳卒中や心筋梗塞で倒れたりします。中国では
肥満を半病人と定義しております。やせすぎない,ふとらないことが生活習慣
病の予防につながり中庸の思想であります。
日本一の長寿県であった沖縄県の男の平均寿命が26位に急落した原因は肥満
症であります。
今までは脂肪細胞は単なる脂肪と考えられておりましたが,脂肪細胞は内分
泌細胞で様々なサイトカインを分泌し,インスリン抵抗性を高めて動脈硬化を
進展させることが証明されております。肥満症は高血圧,糖尿病,高脂血症の
要因であるという科学的根拠が明らかになりました。生活習慣に関連する疾患
は年々増えております。もう一つ問題なのは一家で楽しく食べる習慣も最近は
すたれてきて家族ぐるみの食養生も難しくなったし,外食の機会が多く食塩摂
取量も増えてまいりました。食養生も一人ひとりの裁量で気をつける時代にな
りました。
一無(禁煙),二少(飲食),三多(運動,休養,接)。多接とはできるだ
け多くの人と接してストレスの解消につとめることです。
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