「子どもの発育と発達」


ニュータウンあさいし小児科 浅石 嵩澄


 発育とは体が量的に大きくなる事で,発達とは機能面で進歩する事を意味し
ます。乳幼児健診で体重・身長・頭囲を測定し,発達レベルを検査します。そ
の時,異常を指摘され「病気とは断定できないが,経過をみる必要がある」と
告げられると親は大変心配します。発育・発達には個人差があり,正常範囲に
大きな幅があるのです。正常・異常の境界域に相当する場合,どちらとも判定
できないので経過観察期間が必要になります。

 身体計測値が正常か異常かは,発育曲線上に子どもの計測値の何点かを記入
しその推移から判断します。発育曲線の見方は,体重を例にとると,同月・年
齢の子どもを仮に100人を集めたとして,やせた子から太った子の順に並べ,
真中に位置する子が平均(標準)値で50%tile(パーセンタイル)に相当す
るといいます。100人中前列のやせた子3人と後列の太った子3人が異常の
疑いがあるとされ,それぞれ3,97%tileを越えているといいます。母子健
康手帳に載っている発育曲線(体重・身長・頭囲)の上下2本の実線が97,
3%tileに相当し,この範囲内を正常とします。

 体重では肥満・やせ,身長では低身長,頭囲では大頭・小頭が問題となりま
す。我が子が正常範囲のどのあたりに位置しているか,正常範囲からどのくら
いかけ離れているか,個々の計測値をグラフに記入してみて下さい。

 肥満・やせの判定は身長との関連が大事です。母子健康手帳の身長体重曲線
に子どもの身長と体重の値を記入して,+30%の線を越えていると太りすぎ
と判定されます。2〜3歳を過ぎてからの肥満はそのまま成人肥満に移行する
可能性が強く,生活習慣病を合併する事もあるので今から注意が必要です。

 低身長の原因は家族性,体質性の事が多いようです。2歳以降に除々に低身
長が目立ってきて,3%tileを割る場合は病気を疑って精査が必要です。万一,
ホルモン分泌不全の病気であれば治療によって身長を伸ばす事ができます。

 頭囲は体重とある程度比例するので,大頭であっても,肥満傾向でしかも発
達が正常であるなら心配はないでしょう。しかし,頭囲曲線から大きくかけ離
れている場合は画像診断が必要です。

 発達面でも個人差があります。『Denver式発達スクリーニングテスト(日本
版)』に照らして,

 「つかまり歩き」のできる月齢を例にとると7か月から12か月,「ひとり
歩き」は11か月から14か月と幅があります。言葉に関しては,13か月で
90%の子どもが意味のある単語を話せるようになります。しかし,13か月
になっても意味のある単語を話さない場合でも,難聴が無く,相手のことばを
理解でき,他の発達面が正常なら2歳半〜3歳までは待ってよいでしょう。

 子どもの発育・発達には個人差があり,幅広い正常範囲があるということを
念頭に置いて育児にかかわって欲しいものです。

 母子健康手帳に我が子の発育・発達過程とともに,喜び・驚き,時には失敗
談をも書き込んでください。やがて子どもが親となった時,開いた母子健康手
帳はきっと感慨深い乳幼児期

「自分史」となり,素敵なプレゼントになるでしょう。