「骨はだいじょうぶ? 〜骨粗鬆症の予防と治療〜」
荒井整形外科リハビリテーションクリニック 荒井 久典
【骨粗鬆症とは】骨粗鬆症は骨密度が低下し,痛みや骨折を起こす病気です。
平均寿命が伸びるにしたがって増加しており,我が国の患者数は1,000万人,
うち治療を受けている人は150万人で潜在的な患者がまだ多いようです。寝た
きりの大きな原因であり,予防や治療は重要です。
【原因】骨粗鬆化は加齢とともにすべての人で起こります。閉経後にホルモ
ンバランスが崩れるため女性では50歳代以降患者の割合が増え,65歳以上の半
数が骨粗鬆症といわれています。骨粗鬆症患者が多い家系,早期閉経,痩せは
危険因子です。生活習慣病的な側面もあり,カルシウム不足や偏食,塩分やカ
フェインのとりすぎ等食事の問題,運動不足,steroid 等の服用でも進行しま
す。飲酒や喫煙,精神的ストレスも悪影響を及ぼします。ですから生活上の工
夫や努力で進行を抑えられる可能性があります。
【症状】主症状は腰背部を中心とした痛みです。歩行時の体幹前屈や身長低
下,亀背変形も特徴的です。しかし一番の問題点は易骨折性です。手関節,脊
椎,股関節が好発部位です。手関節の骨折はたいていは徒手整復,ギプス固定
で治療しますが骨折型によっては手術が必要です。脊椎の骨折は尻もちをつい
た時に起こりやすく痛みや進行を抑えるため安静やコルセットが必要です。下
肢麻痺や膀胱直腸障害を来たし手術が必要になることもあります。
股関節では大腿骨頚部骨折がほとんどで手術が必要です。入院や手術をきっ
かけに体力が低下して歩けなくなったり,痴呆が進むこともあります。大腿骨
頚部骨折患者は1987年には全国で約 5 万人でしたが,10年後の1997年には 9
万人と増加しています。高齢化が進んで骨粗鬆症患者数や重症度が増したため
です。脊椎や股関節は骨粗鬆症が高度になると自然に折れてしまうことさえあ
ります。
【診断】X−Pと骨密度の測定で行います。骨代謝マーカーも有用です。骨密
度は骨が一番強い年代と比べて80%以下で要注意,70%以下だと治療が必要で
す。骨密度は閉経後は年に 1 度は調べた方がよいでしょう。
【治療】治療としては第一に薬物療法があげられます。Ca 剤,ビタミン D,
ビタミン K 等が使われてきましたが,最近骨を強くする力の強い bisphospho
nate 製剤が開発されています。服薬時に注文の多い薬剤ですが,慣れると苦
にならないようです。Carcitonin 製剤も骨を強くしたり痛みを和らげるのに
役立ちます。比較的若い年代の方ではホルモン剤を使うこともあります。NSAI
D や筋弛緩剤も併用します。痛みが取れると drop out することが多いですが,
痛くなくても骨密度が低ければ治療を続ける必要があります。物理療法や腰背
筋訓練も有効です。家庭で行う工夫や注意も大事な治療です。カルシウムは 1
日最低800mg摂取が勧められています。体内に入ったカルシウムを骨に取り込
むためにビタミン D も必要です。骨が強くなるにはある程度骨に力がかかる
必要があります。軽い全身運動は骨を強くします。ビタミン D 活性化のため
に日光浴も必要です。慢性の痛みには暖めて筋肉を和らげることも効果的です。
食事療法や運動,日光浴は予防という意味でも心がけてほしいと思います。
【転倒予防について】第一の要点は環境整備です。段差をなくす,床にもの
を置かないなどつまずかない工夫や手すりをつけることも一案です。足元が暗
いことや不適切なはきものも危険因子です。第二には患者さんの身体的問題つ
まり筋力低下,バランス低下,歩行能力低下の改善が挙げられます。適度な運
動を心がけることは重要です。睡眠薬を服用している方も要注意です。歩行が
不安定な場合股関節骨折予防のためプロテクターを着けることもあります。骨
折の危険性が 1/10になったとの報告もあります。都会では組織的な転倒予防
教室が開かれたりしていますが,八戸ではこれからの課題です。