「気になる手足のしびれ」
鈴木 一
日頃気になる手足のしびれについて
まず,しびれの起こりかたが大切であり,
1 )どこが 2 )いつから 3 )どのように
4 )しびれる体位 5 )随伴症状は何かをはっきりさせる事が大切である。
まずしびれの訴えの3つの意味として,知覚鈍麻か異常知覚(ジンジン・ビ
リビリ・ムズムズ・チクチク・ピリピリ・ズキズキ等)かをはっきりさせる事
が必要であり,時に,運動障害(運動麻痺,不随意運動としてのふるえ等)を
しびれとして訴えることもあるので注意が必要である。
しびれの発症様式からの鑑別としては,持続的なしびれは器質的病変,間歇
的なしびれは,機械的圧迫・虚血・体液性因子(電解質,血液pH)異常による
事が多い。
しびれの性状からの鑑別としては,ビリビリは末梢神経の乏血(胸郭出口症
候群,手根管症候群,正座等),ピリピリ・チクチクは中毒,代謝・栄養障害,
慢性炎症性疾患による事が多い。
しびれの鑑別診断のねらいとして,1 )内科的しびれと外科的しびれ(手術
適応の有無) 2 )良性しびれと悪性しびれ(生命の危険の有無)
3 )末梢性しびれと中枢性しびれの鑑別を行う。
内科的しびれとしては,中毒(SMON,重金属,有機溶剤,薬物等)・代謝疾
患(糖尿病,尿毒症,脚気等)・内分泌疾患(甲状腺機能低下)・感染免疫(ギ
ランバレー,脊髄癆等)・変性脱髄(多発性硬化症)・悪性腫瘍性神経障害等
がある。
外科的しびれとしては,脳脊髄疾患として脳腫瘍・脊髄腫瘍・脊髄空洞症・
脊髄血管奇形等が,脊椎疾患としては,頚椎症・椎間板ヘルニア・頚腕症候群・
胸郭出口症候群等が,末梢において絞扼性神経障害が挙げられる。
しびれる部分による鑑別として,脳・脊髄・末梢神経の順に述べる。
1 )脳障害によりしびれる部分としては,一側の半身にしびれがある場合(対
側大脳障害),同時に手と唇がしびれる場合(対側視床障害),特に気をつけ
たいものとして顔面のしびれがあり,顔面はタマネギの皮状に痛覚の中枢神経
支配をうけているため,脳幹障害により顔面のしびれが出現することもある。
2 )脊髄障害によりしびれる部位として,胸髄病変における病変部以下の知覚
障害や両下肢の知覚障害(運動障害や排尿障害を合併することが多い),特殊
なものとして,会陰部に知覚が温存される下半身の知覚障害,温痛覚のみが障
害される解離性知覚障害(脊髄空洞症)がある。以上,脳脊髄障害の診断には
MRI が威力を発揮する。
3 )末梢神経障害によりしびれる部位として,四肢末梢の手袋・靴下状のしび
れや両足の知覚障害,変形性頚椎症による神経根症状として現れる一側上肢の
しびれがある。特に,日常外来でよく遭遇する圧迫性末梢神経障害としては,
正中神経障害(手根管症候群),尺骨神経障害(肘部管症候群),外側大腿皮
神経障害や長期臥床による総腓骨神経障害がある。診断には,筋電図検査が威
力を発揮する。
最後に,胸郭出口症候群や神経痛(三叉神経痛・肋間神経痛・坐骨神経痛)
の特徴について述べた。