「聞いて安心! 妊娠中の心配と疑問」


西村産婦人科クリニック 西村 幸也


 少子少産化にともない,女性が出産までの妊娠期間を経験することは,一生
でせいぜい2,3回しかなくなりました。安全な出産にそなえ,元気な赤ちゃ
んを産むために,神経質になりがちな期間でもありますが,基本的なことに気
をつけながら,おおいに妊娠期間を楽しく過ごしてもらいたいものだと,私は
考えています。

 「あれもだめ,これもだめ」では,窮屈になってしまい,つまらなく不安だ
らけの日々になりがちです。できるだけそうならないように,お話ししてみま
す。

 妊娠初期の流産は,妊娠の約15%に発生します。そのほとんどは自然淘汰
的なもので,やむをえない流産です。

 妊娠22週以降は,早産に注意することになります。早産の時期によって児
の成熟度は異なりますので,一概には言えませんが,例えば妊娠28週で早産
すると1,000g位の赤ちゃんが生まれます。何とか障害なく育てることが
可能ですが,医療側も家族も大変苦労します。早産の予防は,とても大切なテー
マなのです。

 妊婦さんの自覚症状では,腹部の張りや痛み,それから出血が重要です。そ
れに加えて,私たちは,頸管無力症や絨毛羊膜炎の徴候に気をつけながら診療
しています。

 早産のおそれがある状態を「切迫早産」といいます。軽症ならば,自宅での
安静や子宮収縮抑制剤を服用してもらいますが,それでもだめな場合は入院し
て治療することになります。

 最近は治療薬や治療法も進歩しつつありますが,それでも妊婦さんは長期の
入院になり,妊婦さんと家族は長い辛苦に耐えることになります。
 早産や未熟児出生の予防のために,妊婦さん達に是非お願いしたことが2,
3あります。

 第一には,喫煙をしないということです。タバコによる胎児の影響は,低出
生体重になることや,早産の原因になること,そのほか多々考えられます。喫
煙している方は,妊娠がわかったらその日からタバコをやめてください。ご主
人の喫煙による受動喫煙の害も全く同様です。第二には,妊娠中の旅行はしな
いこと。旅先で不意に切迫流産になったりするととても慌てることになります
ので,間近にせまっている新婚旅行をキャンセルしてもらうこともしばしばあ
ります。

 さて,妊娠中の運動はどうなのでしょうか。激しいスポーツはもちろんいけ
ませんが,軽いものなら妊婦さんに適している運動もあります。個人により適
否が違いますから,主治医に相談してみて下さい。マタニティビクスは,妊婦
さんのために工夫された運動です。運動不足の解消,体重の管理にくわえて,
精神的ストレスの解消にもなります。妊婦さん同士のコミュニケーションの場
としても貴重です。

 産科医療に携わるのは,私達産科医ばかりではありません。看護師,助産師
やその他のスタッフが協力して妊婦さんを応援しています。

 外来でも,従来の妊婦健診にくわえて,助産師外来,母親教室,両親学級な
ど,さまざまな機会でコミュニケーションをはかっています。気軽に利用して,
疑問を解消し,また希望を聞かせてもらえればと願っています。