「便でわかる以上〜大腸がんを防ごう〜」


高橋医院 高橋 秀禎


 従来,日本人には胃がんが最も多く,大腸がんはむしろ欧米に多い病気でし
た。ところが最近では,食生活の欧米化に伴って大腸がんが急激に増えていま
す。食生活の欧米化とは,高脂肪,高蛋白,低繊維の食事のことで,その影響
によって大腸がんだけでなく,潰瘍性大腸炎やクローン病などの他の大腸の病
気も増加しています。

 大腸がんの発生は40歳代から増加し,60歳代の人が最も多くなっていま
す。大腸がんになりやすい要素として,

1大腸にポリープがある
2家族に大腸がんになった人がいる
3潰瘍性大腸炎,クローン病,その他のがんの既往症がある

などがありますから,ひとつでもこれにあてはまる人は要注意です。

 直腸,大腸がんは,血便,下腹部痛,便通異常などの自覚症状がありますが,
これらはある程度進行したがんの場合です。自覚症状のないうちに大腸がんを
見つけるために,便潜血反応検査が行われます。最近の検査は,人の血液にだ
け反応する免疫学的方法で行われ,わずかな潜血でも検出できるようになって
います。

 便潜血反応が陽性の人は,精密検査が必要になります。陰性であっても,血
の混じっていない部分を検査した場合や,検査した日はたまたま出血しなかっ
た場合もあるので,年に一度は定期的にこの検査を受けることが大切です。精
密検査を受けなければ,せっかく早期発見のために検診を受けても,意味がな
くなってしまいます。

 大腸には便がたまっていますから,精密検査を受けるときには,大腸の中を
空っぽにしてきれいにしておくための前処置が必要です。そうしないと検査に
時間がかかり,正確な診断ができないばかりでなく,検査が受けられずに検査
のやり直しをしなければならないことがあります。よい検査をするためには,
前処置がとても大切です。

 大腸がんが疑われる場合にはまず直腸指診が行われ,次に注腸X線検査また
は大腸内視鏡検査が行われます。直腸指診はゴム手袋をして肛門に指を入れ,
直腸に触れて診断します。注腸X線検査はバリウムを肛門から入れて,体位を
変えながらいろいろな角度からX線撮影を行います。大腸内視鏡検査はやわら
かい内視鏡を肛門から入れて,大腸の内部を観察します。もし病変が見つかれ
ば,一部をとって顕微鏡で調べる検査をします。早期がんやポリープの場合は
検査と同時に切除することができ,これを内視鏡的ポリペクトミーといいます。

 最後に大腸がん予防の10か条を示します。

1動物性脂肪や肉を食べすぎない。
2食物繊維を十分にとる。
3ビタミンを十分にとる。
4便秘をしないように,規則正しい便通をこころがける。
5過労,ストレス,暴飲暴食をさける。
6自覚症状がなくても年に1回は検診をうける。
7ポリープが見つかったら良性でも放置しない。
8家族や血縁者にがん患者のいる人は要注意。
9血便,便秘,便柱が細いなどの症状のある人は要注意。
10大腸以外の臓器にがんのあった人は要注意。