「ストップ糖尿病!~みんなで学ぼう予防の基本~」
青森労災病院 玉澤 直樹
八戸糖尿病談話会では,八戸市医師会と青森県糖尿病対策推進会議の後押し
を受けて世界糖尿病デー(世界共通毎年11月14日)に糖尿病啓蒙活動を行って
参りました。そこで,今回は世界糖尿病デーに合わせて本講演を行わせていた
だきました(来年からもこの時期に市民健康づくり講座において糖尿病の講演
をさせていただきたいと考えています)。
糖尿病は複数の遺伝因子と複数の環境因子が関与して発症する多因子遺伝疾
患であることを説明し,環境因子を主体に講演しました。内容は「糖尿病診療
ガイドライン2024 21章2型糖尿病の発症予防」に沿って行いました。
環境因子として,肥満,食事,運動の話をしました。肥満については,これ
までの大規模臨床研究の結果を説明し,小児肥満について小児期の過体重は思
春期前に解消できれば発症リスクを増加させないことを説明しました。国立国
際医療研究センターの“糖尿病リスク予測ツール第3版”を使用し糖尿病と診
断されたことがない30~64歳の方が3年以内に糖尿病を発症するリスクを30%
減の食事で飼育した群(腹七分)との比較などでリラックスしてもらいました。
食事については,三大栄養素,喫煙・アルコールの話をしました。量的には適
正総カロリーの決定,炭水化物:蛋白質:脂肪の摂取割合,質的には,糖尿病
発症リスクを考慮すべき炭水化物の摂取割合(45-65%),植物性蛋白質,魚
ないし植物性脂肪摂取の有用性を話しました。そして,日本人において2型糖
尿病の予防のための飲酒は推奨されないこと,喫煙は受動喫煙を含めて2型糖
尿病の独立した危険因子であることを強調しました。運動については,座位行
動時間について,日本人の座位時間(1日約7時間)が世界20か国の中で一番
長く,日本人には座りすぎによる2型糖尿病発症リスクが大きいこと,そして
そのリスクは,運動していてもいなくても変わらないとされている(運動不足
とは別物)ことなどを紹介しました。
遺伝因子については,ゲノムワイド関連解析(GWAS)を中心とした2型糖尿
病感受性遺伝子探索の進歩により,発症リスクの予測が格段に向上してきてい
ます。一般対象者に感受性遺伝子のスクリーニングを行い関連遺伝子変異の多
い高リスク群に対して,より積極的に食事・運動などの生活習慣や体重に対す
る介入を行う“ゲノム個別化医療”が導入される可能性があります(将来的に
は発症予防の薬剤が投与されることも十分考えられます)。
総括として糖尿病は複数の環境因子と遺伝因子による多因子疾患(各々リス
ク因子の重みも異なる)です。環境因子は積極的な介入により,2型糖尿病の
発症を予防できるものです。バランスの取れた食事を「腹八分」とし,日常生
活のなかで身体活動量を高めるように努め,肥満を是正することが大切。遺伝
因子は生まれつき決まっているものだが,病気そのものが遺伝するのではなく,
糖尿病を起こしやすい体質(複数の関連遺伝子)が遺伝する。両者の総和があ
る“しきい値”を超えると発症すると考えられているとまとめました。
質問1:自分はやせているが,糖が少し高いようだと言われて心配している。
解答:(糖尿病の定義を説明し)痩せている糖尿病の場合,インスリン分泌低
下の遺伝因子の関与が大きい可能性があり注意が必要です。
質問2:糖尿病患者でがんの検査は必要か。
解答:糖尿病患者では,糖尿病でない人に比べて大腸がん,肝臓がん,膵臓が
んのリスクが高いとされています。時々検査した方が良いと思います。