「ひきこもりを理解するために 〜家族,支援者ができること〜」


みちのく記念病院 楠野 泰之



T.はじめに
 ひきこもりとは何を意味するのか、医学研究の対象となるのか、どのような医学
上の対策を取ることができるのか不明であるので検討した。

U.研究方法
 ひきこもりに関する119編の医学論文を対象とし以下について調べた。
 1.ひきこもりの定義
 2.ひきこもりの原因
 3.ひきこもりが医学研究の対象となるか
 4.ひきこもりに対して医学上の対策を取ることができるか

V.結果
 1.統一的なひきこもりの定義はなく研究者がそれぞれに定義していた。
 2.ひきこもりは原因に着目すると3群に大別された。
   (ア)その人の自由意志で自宅・自室にこもっている自閉
   (イ)東日本大震災などの大規模災害や高齢化などの社会現象・自然現象を誘
     因とした孤立化
   (ウ)統合失調症や発達障害などの精神疾患による閉居
 3.(イ)(ウ)は社会医学上・臨床医学上の研究対象となるが,(ア)は医学研究
   の対象とならず医学上の対策も取れない。
 4.大規模災害を誘因としたひきこもりは個人のプライバシーが障壁となり支援
   が困難である。保健師やボランティア団体の積極的な介入と支援が必要。
 5.精神障害の症状としてのひきこもりには受診の継続と在宅医療の導入が必要。

W.考察
 1.ひきこもりには医学研究の対象となり医学上の対策が取れるものと、そうで
   ないものとがある。
 2.大規模災害を誘因とするひきこもりには災害医学的な視点で研究を継続し、
   予防策や対応策についての知見を集積する必要がある。
 3.精神障害によるひきこもりには在宅医療を積極的に行い、実社会での研究・
   臨床活動を継続する必要がある。

X.おわりに
 自由意志で自宅にこもっている自閉をひきこもりと言う風潮があり,市役所や一
部の精神医学者は支援が必要だと言っている。
今回の講演ではこれを暗に批判した。
医学が研究・支援すべきひきこもりは他にある。