「気をつけたい眼の病気〜QOV(Quality of Vision)を保つために〜」
八戸平和病院眼科 東 寛子
1.緑内障
中途失明原因No.1の疾患。緑内障とは視神経が眼圧によりダメージを受け、
視神経が減少し、視野や視力に障害がでる病気。緑内障は原発閉塞隅角緑内障・原
発開放隅角緑内障・正常眼圧緑内障・続発緑内障があり、緑内障全体の7割を占め
ているのは正常眼圧緑内障。診断するには眼圧検査だけでは判別できず、眼底検査
(眼底写真・OCT)や視野検査を受ける必要がある。治療は眼圧を下げる点眼治
療が主体となる。点眼治療で効果がない場合は手術することもある。欠けてしまっ
た視野は取り戻せないので、今以上に進行させないために、治療を中断することな
く定期的な診察・検査が必要。
2.糖尿病網膜症
中途失明原因No.2の疾患。糖尿病による眼合併症は白内障・角膜障害・視神
経症・緑内障・眼球運動障害などがある。特に重要なのは糖尿病網膜症。単純糖尿
病網膜症→増殖糖尿病網膜症→失明と進行しないように、糖尿病と診断されたら眼
の症状がなくても眼科で検査を受ける必要がある。進行度合いを見るための検査は
眼底検査、蛍光眼底造影検査、光干渉断層計(OCT)などがある。治療は網膜光
凝固術(レーザー治療)、硝子体注射、硝子体手術など。しかし治療を進めていっ
ても視力低下を免れないこともある。基本的に厳格な糖尿病のコントロールが重要。
3.加齢黄斑変性症
高齢化、生活の欧米化によって近年著しく増加。網膜の中で最も感度の高い部位
である黄斑が障害される病気。変視症(ゆがみ)、中心暗点、視力低下などの症状
がある。萎縮型と滲出型とあるが、萎縮型には治療法はない。滲出型には視力維持
目的の治療法がある。第一選択は抗VEGF薬の硝子体注射、その他には光線力学療法
などがある。予防として早期発見(片眼ずつ歪みや暗点がないかをセルフチェック
する、健診を受ける)、日光から眼を守る(サングラスなどで紫外線やブルーライ
トをカット)、禁煙、食事(抗酸化ビタミン、ミネラルを含む食品や緑黄色野菜、
特にルテインを多く含む野菜、オメガ3脂肪酸を含む赤身の魚などを積極的にとる)
食事でとるのが難しい場合にはサプリメントを服用するのも一つの方法。
4.網膜静脈閉塞症
高血圧や動脈硬化の人に起きやすい。網膜にある静脈が詰まってしまう病気。詰
まる部位によって網膜中心静脈閉塞症と網膜静脈分枝閉塞症がある。症状は黄斑部
分に出血、浮腫があると視力低下となるが、黄斑部分以外の病変であれば症状がな
いこともある。治療は黄斑部浮腫に対しては抗VEGF薬の硝子体注射が主体だが
レーザー治療や硝子体手術を要することもある。やはり基礎疾患のコントロールが
重要。
その他、加齢によって起きる眼の変化として老眼、白内障、ドライアイ、生理的
飛蚊症をピックアップしてお話した。
良好な視機能を保つためには早期発見、早期治療が肝心。症状がなくても病気が
潜んでいることがあるので、視力検査だけでは不十分。眼底写真を主とした眼検診
をお勧めしたい。自己判断は危険なので症状があるときは放置しないで受診を。
せっかく病気と診断されても治療中断はとてももったいない。継続して治療を受け
られるように環境を整えることも重要。
QOVを保つためにも上記を心にとめていただきたい。