「今,話題のピロリ菌!あなたはどこまでご存じですか?」


五戸総合病院 新井田 修久



 1994年WHOの国際がん研究機関IARCはピロリ菌を「発がん物質」としました。
「今話題」とは,2014年9月24日そのIARCが「胃がんの8割はピロリ菌感染が
原因で,除菌で発症を3〜4割減らせる」と発表したことです。

 日本では母→子など家族内感染による感染が8割と言われ,幼少期の感染の
みが生涯の持続感染に繋がるといわれております。現在ピロリ菌感染者は3,50
0万人で50代以上で45%前後,40代で30%,30代で20%,20代で10%と感染率
は減少しております。

 ピロリ菌研究は1982年バリー・マーシャルとロビン・ウォレンがピロリ菌の
分離培養に成功してから精力的に進み,2人は2005年ノーベル医学生理学賞を
受賞しました。

 除菌治療で胃十二指腸潰瘍の発生・再発抑制(90%),胃MALTリンパ腫の消
失(80%),特発性血小板減少性紫斑病の血小板数上昇(50%),早期胃がん
内視鏡治療後の異時がん抑制(50%)などの効果が知られています。

 これまでに加え,平成25年2月慢性胃炎の除菌治療が保険適応となっており
ます。

 ピロリ菌未感染者からの胃がん発症がなかったことや,除菌が成功した場合
の胃がん発症率(0.9%)と失敗した場合(2.2%)に違いがあることなどから,
ピロリ菌が胃がん発症に関わり,除菌による抑制効果があることが知られてい
ます。しかし,除菌成功後も胃がんリスクがあるのでその後もきちんと内視鏡
検査を行っていく必要があります。

 内視鏡およびピロリ菌感染検査を行い,除菌治療および内視鏡フォローで胃
がん関連死をなくし,さらに若年者のピロリ感染対策により胃がん発症予防お
よび感染拡大を終焉させることで胃がん撲滅を目指していきましょう。

 最後に演者の被検動画供覧で内視鏡検査解説を致しました。