「よくわかる予防接種の話」
村上こども医院 村上 真子
子どもがかかる感染症はたくさんあり,中には命に係わる重大な感染症もあ
る。そして,その中には予防接種をすれば防ぐことができる病気がある。この
講座では「子どもを感染症から守る!」を主題とし,また,ここ数年で新しい
ワクチンが次々と増えて定期接種に追加になるなど予防接種は大きく変わって
きており,「予防接種の最新情報」を副題として講演した。
ワクチンVaccineで防げるPreventable病気DiseasesをVPDという。VPDには15
種類くらいの病気があり,この中には定期接種で防げる病気と任意接種で防げ
る病気がある。
定期接種には4種混合(ジフテリア,破傷風,百日咳,ポリオ),BCG,麻
疹・風疹混合,日本脳炎,ヒトパピローマウィルス(HPV)感染症(子宮頸が
ん予防),ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(ヒブ)感染症,肺炎球菌感
染症があるが後者の3種類は昨年4月に新たに追加された。ただしHPVワクチ
ンは安全性の検討のため現在は積極的な勧奨は一時中止となっている。
任意接種にはロタウイルス胃腸炎,B型肝炎,おたふくかぜ,水ぼうそう,
インフルエンザなどがある。任意といってもどれも重要なワクチンであり,自
費で受けることになるが(自治体によっては助成金あり)なるべく集団生活に
入る前にはワクチンを済ませた方がよい。
ワクチンデビューは数年前までは生後3か月であったが現在は2か月からワ
クチンを受けることが大切である。ロタウイルスもヒブも肺炎球菌も乳幼児期
にかかることが多い。
ロタウイルスワクチンは一番新しいワクチンである。乳幼児のロタウイルス
胃腸炎は重症な脱水症状や脳症,けいれんをおこすこともありノロウイルスよ
りも重症感がある。
ヒブ感染症と肺炎球菌感染症は細菌性髄膜炎の主な原因である。死亡率も高
く,助かっても重い後遺症を残すことが多い。発熱などのかぜ症状から急速に
病態が悪化する。これらのワクチンは数年前より任意接種で開始されたが,細
菌性髄膜炎の罹患率は劇的に減少した。また,肺炎球菌ワクチンは11月より7
価から13価のワクチンとなり,より効果が期待できる。
予防接種には副反応のリスクはあるが,かかった時のリスクも考えなければ
ならない。予防接種は@感染症を予防する A重症化を抑える B流行を防ぐと
いう効果がある。
ポリオワクチンはこれまでは経口の生ワクチンだったがまれにマヒをきたす
ことがあり,1年前から注射による不活化ワクチンに替わった。今は3種混合
にポリオが加わり,4種混合となった。
麻疹は2006年から2回接種となり,患者発生はほとんどなくなり麻疹排除宣
言も近い。
一方,風疹は2012年から2013年にかけて流行し,特に予防接種を受けそびれ
た30代,40代の男性の罹患が目立った。風疹自体は軽症のことが多いが,妊婦
が風疹に罹って先天性風疹症候群の子どもが生まれることが問題となる。そこ
で八戸市でも風疹予防接種助成事業が11月から施行された。
予防接種におけるポイントは@感染しやすい年齢までに受ける A接種回数
を守る B接種間隔に守ることなどである。
予防接種は種類も回数も多くなり,同時接種で行うようになった。単独接種
と比べ有効性や副反応への影響に差はない。
予防接種スケジュールは生後2か月になったら,かかりつけ医と相談して決
めてほしい。
余談であるが講演当日,はっち1階ではスイーツフェアで甘い香りの中,若
い親子がたくさんいて賑わっていた。一方,5階での講演を聴きにいらした方
々はご年配ばかりで,質問も高齢者の肺炎球菌ワクチンについてであった。