「子宮がんから身を守る方法」
青森労災病院産婦人科 梅本 実香
男性の半数,女性の1/3ががんで亡くなる時代になりました。@相手(がん)
を知る A予防する B検診を受ける―この3つでがんから身を守りましょう。
子宮頸がん
知る:子宮の入り口にできるがんです。がんは中高年の病気と考えがちですが,
子宮頸がんは20〜30代で急増しています。原因は,性交渉により発がん性ヒト
パピローマウイルス(human papilloma virus,以下HPV)に感染し,感染が長
期化するとがん化することが分かってきました。100種類以上あるHPVの中で,
特にがんに関与するのが16型,18型です。がん化しても初期は症状がないこと
が多く,不正出血などの症状が始まった時には既に進行期に入っていることが
多いです。上皮内癌・ごく初期であれば円錐切除術(子宮の入り口を切り取る
手術)で済み,妊娠や出産も可能ですが,少しでも進行していると,子宮とそ
の周りを含めて大きく切除する手術が必要で,妊娠不可能になります。
予防:HPV16,18型を防御するための子宮頸がん予防ワクチンを適切に接種す
ると,子宮頸がんの発症が70%減少します。平成25年度から定期接種化しまし
たが,今年6月に積極的推奨をしないよう勧告が出されました。理由は,ワク
チン接種後に強い疼痛に長く悩まされる患者さんが複数判明し,ワクチンの関
与がまだ明らかでないためです。現在,専門家が集まり調査中ですが,関与な
しと判断され元に戻りましたら,ワクチン接種を検討して下さい。性的接触後
の方でも,45歳まではワクチンが有効と報告されています。
検診:子宮頸がん検診は,直接見ながら細胞を取り検査が出来るため,とても
有効な検診方法です。ワクチン接種しても100%は予防できないため,子宮頸
がん検診は重要です。前がん病変が存在するので,毎年健診を受けることによ
り,進行がんになる前に発見可能です。ただし,最近増えている子宮頸部腺が
んは,検診で見つけにくい場所にあり,放射線や化学療法も効きにくく厄介で
す。腺がんもHPVが主な原因であり,ワクチンが有効です。
子宮体がん
知る:子宮の奥,子宮内膜にできるがんです。女性ホルモンの一つエストロゲ
ンに長く晒されることが発症に関与するため,リスクが高いのは妊娠・出産の
経験がない方,極端な生理不順や排卵障害,乳がんの既往(特にタモキシフェ
ン服用中は前がん病変である子宮内膜増殖症に注意),また脂肪組織からも女
性ホルモンが分泌されるため,肥満や生活習慣病もリスクがあります。子宮頸
がんに比較して,初期から不正出血が見られることが多いです。
予防:子宮頸がんのようにワクチンは存在しないため,検診が重要です。
検診:不正出血が見られたり,リスクの高い方は積極的に医療機関を受診し子
宮体がん検診を受けましょう。方法は,子宮の中に細い専用の器具を挿入し,
子宮内膜の細胞を採取し,顕微鏡検査で判断します。また,超音波検査で子宮
内膜が厚く見える場合,子宮体がんの可能性を疑い,医師から検査を勧められ
ることがあります。
卵巣がん
知る:原因が完全に解明されていませんが,妊娠・分娩経験がないなど,排卵
回数が多いことも関与しているようです。最近子宮内膜症が増えていますが,
子宮内膜症によるチョコレート嚢腫が,大きかったり古くなったりしてがん化
に関わることも分かって来ました。
予防:卵巣がんにもワクチンはなく,検診が重要です。また,子宮内膜症の方
は,医療機関で必要に応じて検査や治療を受けることで,がん化の予防につな
がります。
検診:超音波検査で卵巣の腫れが分かります。基本は一年に一回ですが,卵巣
がんは急激に発症・進行することも多いため,腹痛やお腹の張りなど何か気に
なる症状があったら,一年経っていなくても診察を受けた方が良いです。