「耳よりな話 〜中高年に多い耳の病気」


はかまだ耳鼻咽喉科医院 袴田 勝



 最近,耳鼻科では中高年の患者さんの占める割合が増えています。それら患
者さんの訴えの多くは耳に関するものです。
 本日は中高年の皆様に多い耳の病気の代表的なものについてお話をさせて下
さい。
 耳は外耳,中耳,内耳の3つに大きく分けられます。

 まずは外耳の代表的な病気についてお話しします。
 耳垢栓塞:耳の穴(外耳道)に耳垢がギッシリ詰まっている状態です。耳掃
除や洗髪の直後に急に耳が塞がった感じがして聞こえが悪くなります。無菌水
での耳洗浄で改善されます。

 次は中耳の病気です。
 耳管狭窄症:中耳(鼓室)と上咽頭(鼻とのどの間)をつないでいる管(耳
管)の働きが悪くなって,耳が塞がっている感じや自分の声が耳や頭に響き(自
声強調),少し聞こえが悪くなったように感じます。加齢によって耳管機能が
低下しているところに風邪をひく(急性上咽頭炎)と発病します。上咽頭癌で
もこの様な症状が現れますので要注意です。

 最後に内耳に起こる病気について説明します。
 感音難聴(内耳性難聴):年を重ねると内耳の蝸牛の細胞の働きが悪くなり
ます。この細胞は音を電気刺激に変化させて脳に送るという仕事をしています。
特に70歳代になりますと,個人差はありますが,この細胞の活力がかなり低下
してきます。そうなりますと「耳が遠くなった。聞こえづらい」と感じます。
しかし,補聴器を付けることによって聞こえが良くなる場合があります。最近
は補聴器の性能もかなり良くなっています。耳鼻科医に相談し,検査(補聴効
果:補聴器を付けることによって聞こえが良くなるか,ならないか)をうけて,
良心的な業者を紹介してもらうことがよいと思います。

 耳鳴症:いわゆる「耳鳴り」のことです。この病気は圧倒的に中高年に多い
病気です。原因はほとんどが不明で,体調の善し悪しで強く感じたり弱く感じ
たりします。残念ながら「耳鳴り」をピタリと止める薬はまだ開発されていま
せん。耳鼻科では症状を和らげるということを目的に薬を処方しています。ほ
とんどの場合が「問題のない耳鳴り」ですので,「ああ,また耳鳴りがしてい
るな」と思って気にしないようにして下さい。「耳鳴り」に慣れること,お友
達になることです。

 めまい症:めまいは色々な病気が原因で現れてくる症状です。この中で,耳
が関係する代表的な病気を2つ取り上げてお話しします。

 1)良性発作性頭位めまい症:この病気は内耳の前庭という場所の不具合に
よって起こります。寝たり起きたり,寝返りを打ったりと急に頭を動かすと,
半規管の中で剥げ落ちた耳石がこの部位の細胞に衝突し,めまいが起こります。
注射や薬を服用しながら前庭機能の正常化を待ちます。最近は運動療法によっ
て早期に改善されることもあります。

 2)メニエール病:突然にめまい発作・耳鳴・難聴が生じます。それぞれの
症状が単独に現れる場合もありますし,複数の症状が同時に現れる場合もあり
ます。これらの症状が反復するのがこの病気の特徴です。内耳の内リンパが水
腫(水ぶくれ)状態になると発病するといわれておりますが,はっきりとわか
っておりません。ストレスや過労が発病の引き金になる場合が多いので,この
病気と診断されたら無理な生活をしないことです。

 何れにしろ,耳がおかしいなと思いましたら耳鼻科を受診してみて下さい。