「生活習慣病を知ろう」


向井田胃腸科内科医院 向井田 英明


生活習慣病

 糖尿病,心臓病,脳卒中,がんなどの病気は加齢とともに発症・進行すると
考えられ,以前は成人病と呼ばれていた。しかしその発症には食生活・喫煙・
飲酒などの生活習慣が深く関わっていることが明らかになり,平成8年12月厚
生省の公衆衛生審議会は成人病にかわり生活習慣病という概念を導入,生活習
慣が病気の発症・進行に深く関わっているさまざまな病気を生活習慣病と総称
した。

主な生活習慣病

 動脈硬化性疾患である脳卒中(脳梗塞,脳出血)・冠動脈疾患(狭心症,心
筋梗塞),動脈硬化の危険因子である糖尿病・高血圧・脂質異常症・高尿酸血
症,さらにがん,歯周病,慢性閉塞性肺疾患(COPD),アルコール性肝疾患な
どがある。
 脳梗塞が疑われたら,血栓溶解療法は現時点では発症3時間以内に行わなけ
ればならないので(将来的には4.5時間以内),一刻も早く専門病院を受診す
る必要がある。したがって脳梗塞が疑われる症状が出現したら直ぐに119番に
電話するか専門病院を受診すること。
 歯周病とは,炎症によって歯を支えている歯ぐきや骨といった歯周組織が破
壊される病気で,抜歯原因の第1位である。冠動脈疾患や肺炎なども引き起こ
すといわれている。さらに糖尿病との関連も強く,糖尿病の第6番目の合併症
といわれている。
 肺気腫・慢性気管支炎はどちらも喫煙が関係することが多く,またしばしば
合併するため,合わせて現在ではCOPDと呼ばれる。日本では潜在患者は40歳以
上の18.5%(男性13.1%,女性4.4%),530万人以上と推定されている。最大
の原因は喫煙で患者の90%以上は喫煙者である。症状は咳・痰・息切れで,進
行すると肺炎を繰り返したり在宅酸素療法が必要となる。治療で一番重要なの
は禁煙であり,その他薬物療法,リハビリテーションなどがある。

喫煙について

 JT全国喫煙調査によると平成23年の男性の喫煙率は36.0%,女性は12.0%で
ある。昭和40年の喫煙率はそれぞれ82.3%,15.7%なので男性は順調に低下し
てきているが,諸外国に比べまだまだ高い(アメリカは男性17.9%)。空気清
浄機ではたばこの煙はきれいにならず,分煙もあまり効果はない。したがって
室内(可能ならば建物内)すべて禁煙にする必要がある。両親の喫煙が小学生
の喫煙に与える影響についての調査では,両親とも喫煙者の場合は当然子供が
喫煙する割合は高くなるが,なんと母親のみ喫煙する場合が一番子供が喫煙す
る割合が高かった。このように母親の喫煙は子供に影響を与える可能性が高く,
将来のことを考えれば女性の喫煙率をもっともっと下げる必要がある。

一無,二少,三多

 日本生活習慣病予防協会のウェブサイトに掲載されている「一無,二少,三
多」は生活習慣病の予防に有用である。「一無」とは無煙・禁煙の勧め。「二
少」は少食・少酒の勧めで,具体的には常に腹七・八分目で,塩分は7〜8g
以下,3つの白を控え(白米・白パンの白,食塩の白,砂糖の白),食物繊維
を豊富にとる。1日のアルコール摂取量は日本酒で1合程度まで。「三多」と
は多動・多休・多接の勧めで,1日に20分の歩行を2回,体操・筋力トレーニ
ングを各10分行う。休養をしっかりとり,多くの人・事・物に接して創造的な
生活をする