「緑内障ってどんな病気?」
黒滝眼科 山崎 仁志
平日にも関わらず,たくさんの出席がありました。
緑内障は今や成人の中途失明原因の第1位となっております。次に糖尿病網
膜症,網膜色素変性症の順となりますが,現在の眼科疾患の中では緑内障は非
常に重要な病気といえます。今回は,この緑内障について少しでも一般市民の
方にご理解いただきたくお引受けいたしました。以下に,講演内容を簡単にま
とめます。
緑内障の発症頻度は,疫学調査の結果40歳以上の約20人に1人であることが
わかっております。さらに,そのうち約9割の方が未治療未発見であったこと
からも,緑内障は進行するまで自覚症状に乏しいということが分かります。こ
のため,注意が必要です。
緑内障には様々なタイプがありますが,大きく3つに分類されます。1つ目
は原発緑内障で一般に緑内障と呼ばれるものです。緑内障全体の約90%を占め
ます。この中には,隅角が正常に開放している原発開放隅角緑内障と,閉塞し
ている原発閉塞隅角緑内障が含まれます。原発開放隅角緑内障はさらに,眼圧
が21mmHg以上の狭義の原発開放隅角緑内障と,眼圧が正常範囲内の正常眼圧緑
内障に分類されますが,その病態はほぼ同様であるため,同様の治療が行われ
ます。
次に眼圧についてです。眼の中に満たされている液体を房水といいます。こ
の房水は眼内を循環しておりますが,この房水による眼球内の圧力を「眼圧」
といいます。房水は産生される一方で眼外へ排出されることにより眼圧は一定
に保たれますが,房水の排出が悪くなると当然眼圧は上昇し緑内障が発症しま
す。
このように眼圧依存性に網膜視神経線維が欠損すると,その欠損部に一致し
て視野障害が生じます。初期では視野は中心からずれたところが見えなくなる
ため,自覚症状がほとんどありません。この時点では,検診等で異常を指摘さ
れ視野検査を行って初めて発見されることが多いのが現状です。さらに進行す
ると見えにくいと感じるようになります。後期では視野障害が拡大し,歩くと
人や物にぶつかるようになります。この状態でも,もう片方の視野がいい場合
気づかない場合があります。ここで注意が必要なのは一度失った視野は元には
戻らないということです。
以上を踏まえ,診断には眼圧測定,眼底検査,視野検査を行い,緑内障の有
無,さらに進行度を判定した上で,唯一エビデンスのある眼圧下降治療を行い
ます。
治療の流れとしては,まずは目標とする眼圧を設定し,多くの場合点眼薬で
治療を開始します。目標眼圧が達成できなければ,点眼薬の数を増やし,それ
でも眼圧が下がらなければ手術療法も考慮します。また目標眼圧を達成できて
も緑内障が進行する場合も同様に対処します。
以上を実際の眼圧測定器や視野検査計の写真を見せたり,検査中の風景を示
しながら説明したり,結果の判定方法なども具体的に説明しながら話を進めて
いきました。
最後にまとめますと,緑内障で一度失った視野は元通りには戻りませんので,
早期発見,早期治療が重要ということです。その際,治療の目的は視野の現状
維持・あるいは進行を緩やかにすることとなります。以上より40歳を過ぎた場
合,あるいは何らかの症状がある場合は,一度眼科専門医で検査を受けること
をお勧めします。このような認識が一般市民に広まることを期待する次第です。