「タバコと健康」
メディカルコート八戸西病院 田中 由紀子
日本では2010年10月にタバコ税が上がり,現在1箱20本入り約410円です。
1箱あたりの税率は約65%です。イギリスは1箱1,000円くらいで税金は約82
%を占めます。2010年の日本の喫煙率調査では男性36.6%,女性12.1%,全国
平均は23.9%です。およそ2,600万人の喫煙者がいるといわれています。青森
県は全国の中でも喫煙率が非常に高く,2007年の都道府県別喫煙率調査では男
性1位,女性4位でした。
2003年に「健康増進法」が施行され,第25条には「多数の者が利用する施設
を管理するものは,これらを利用する者について,受動喫煙を防止するために
必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と明記されています。国民の
健康増進の観点から,積極的に受動喫煙防止の取り組みを推進しなければいけ
ません。
たばこの煙には,4,000種以上の化学物質が含まれており,そのうち200種以
上に有害作用があるといわれています。なかでもニコチン,一酸化炭素,ター
ルは3大有害物質といわれています。ニコチンは,中枢神経の興奮作用や心負
荷を増大させます。また,たばこ依存の原因となります。一酸化炭素は,ヘモ
グロビンと結びつき赤血球の酸素運搬能を妨げます。タールは発がん物質が含
まれ,やっかいなことにタバコをやめても体内からなくならないため,長期間
にわたり体に悪影響を及ぼします。
喫煙本数が多い人ほど,心筋梗塞や脳卒中で死亡する危険性が高いことが分
かっています。また,がんとも深い関係があります。その他,さまざまな臓器
に害をもたらすためタバコは百害あって一利なしです。
次に,本来タバコを吸っていないにも関わらず,自分の周囲の人が喫煙する
ことで健康を侵される「受動喫煙」について説明します。タバコの煙は2種類
あり,フィルターを通して直接吸い込む煙が主流煙,先の火のついた部分から
立ち上る煙を副流煙と呼びます。この副流煙は,主流煙よりも有害物質の量が
2.8〜50倍も多く含まれています。受動喫煙による死亡リスクは,心筋梗塞で1.
2倍,脳卒中で1.8倍,肺がんで1.2倍です。特に夫が喫煙者で妻が非喫煙者の
場合,妻が肺がんで死亡するリスクは1.5〜2倍も高いといわれています。乳
幼児の突然死のリスクが増加したり,成長にも悪影響があります。
受動喫煙の影響をなくするには,吸わない以外に方法がありません。日本で
も路上喫煙防止条例のある町が増えてきています。ポイ捨てを防ぐという環境
面でも良い効果があります。
こんなに悪影響のあるタバコを,心の奥では「やめたい」と思っている人は
大勢いるはずです。しかし,タバコをやめられないのは意志が弱いのではなく,
ニコチン依存症という病気のせいです。自己流のつらい禁煙を何度も繰り返す
より,禁煙補助剤などを使う禁煙外来で適切な治療をすることをおすすめしま
す。禁煙外来では,タバコをやめたことによる禁断症状を和らげる薬を使用し
ながら,喫煙の生活習慣を見直すカウンセリングをすることで約3か月で禁煙
成功へ結びつけます。2006年4月からある一定の条件を満たすことで,健康保
険を使ってタバコを毎日1箱吸うより安く治療が受けられます。治療中でも吸
いたくなることもありますが,口さびしい時はお茶やガムなどで口の中を刺激
したり,深呼吸をするなど気持ちを切り替えるようにします。
当院の禁煙外来では100名以上が禁煙に成功しています。禁煙は,身体的に
も経済的にも大きなメリットが得られます。
最後に,当院の理学療法士さんと一緒に肺の若返りトレーニングを行い講演
を終了しました。