「女性の健康づくり−がん・更年期あれこれ−」


メディカルコート八戸西病院婦人科 武者 晃永


 女性の健康づくりを主題にして,子宮癌(子宮頸癌,子宮体癌)の原因,診
断,治療について解説し,検診の重要性,HPVワクチンによる予防などにつ
いても具体的な症例を提示した。併せて,更年期に起こりうる様々な症状と卵
巣機能との関連,内科,整形外科的疾患との関連についても触れ,日常の健診
を受診することや日頃から何でも相談できる「かかりつけ医」を持つ大切さを
強調した。

子宮頸癌
 子宮頸癌の主たる原因はヒト乳頭腫ウィルス(HPV)感染であり我が国で
もHPV16型,18型に対するワクチン接種が平成21年12月から開始された。ま
た対象年齢を限った形ではあるが,公費助成の制度が本年2月頃より始まった。
一方,癌検診の重要性は言うまでもなく子宮頸部細胞診によるスクリーニン
グは無症状であることの多い初期子宮頸癌や前癌状態である異型上皮などの発
見に寄与している。さらに併せて発癌に関連するHPVのハイリスク群の感染
の有無を検査することで,より検診の精度が向上すると期待されている。しか
しながら,我が国の子宮癌検診の受診率は約20%前後と先進諸国の中でも極め
て低く,今後受診率を高めていくことが重要になる。また子宮頸癌の予防ワク
チンを接種したから大丈夫ということではなく,16,18型以外のハイリスク群
が原因となる発癌もあり,定期的な検診を受けることが大切であることに変わ
りはない。

子宮体癌
 我が国では全子宮悪性腫瘍中,子宮体癌の占める割合が増加している。子宮
体癌の臨床的背景として以前より肥満,高血圧,糖尿病などとの関連が指摘さ
れている。食生活の変化などから,最近メタボリック症候群が増加しているこ
とが子宮体癌増加の原因となっている可能性もある。
 子宮体癌の多くはエストロゲン依存性のある1型であるが,これらが臨床的
背景の当てはまらない,より低分化で悪性度の高くエストロゲン依存性のない
2型も増えている。子宮体癌の検診はまだ一般的ではないが子宮内膜細胞診,
組織診などとともに経腟超音波検査での子宮内膜厚の観察がスクリーニングと
して有効なこともある。また,CT,MRIといった画像診断は子宮頸癌,子宮体
癌を問わず,臨床進行期を診断する上で重要な情報となる。

更年期
 おおよそ,40〜60歳の間で閉経前後の5年間を更年期とし,この時期に卵巣
機能低下を主たる原因として,これに加齢による身体的,精神心理的,社会的
要因が加わり発症する不定愁訴を更年期症状という。さらに,これらの症状が
日常生活に障害をきたす場合を更年期障害とし,更年期にある婦人の30〜40%
にみられるとされる。症状はのぼせ,ほてりなどの血管運動症状,不眠,憂鬱,
不安などの精神神経症状から高脂血症,心血管症状や骨量減少,骨粗鬆症によ
る腰痛や骨折まで多岐にわたり,内科,整形外科,心療内科からのアプローチ
が必要な場合もある。ホルモン補充療法や漢方療法が主体となるが,普段から
健康診断を積極的に受診し,その結果を活用するために,相談できる「かかり
つけ医」を持つことが健康づくりにあたって大切なことと思われる。