「とっておき!大腸がん情報」


はちのへ99クリニック 内海 謙


 大腸がんに関してお話しします。戦後しばらく死因のトップだった脳血管疾
患が,昭和50年代半ばに悪性新生物に取って代わられ現在およそ3人に1人は
悪性新生物で亡くなっています。その中でも,これまで胃がんが多かったので
すが,女性では大腸がんがトップとなり,男性では肺・胃がんに次ぐ頻度です。
罹患数予測では平成27年には男女とも大腸がんがトップになると報告されてい
ます。

 加齢・遺伝・生活習慣などが細胞の遺伝情報を狂わせ大腸ポリープ,特に腺
腫ができ,増大すると大腸がんが発生するといわれていますが腺腫を経ないこ
ともあります。大腸がんはS状結腸・直腸に多く,合わせると全体の7割を占
めます。症状としては血便・下血・腹痛・便の狭小化などが有りますが,発症
したときには既に進行がんの可能性が高く,検診で早期発見することが望まれ
ます。種々の検査法があり,検診では便潜血反応,精検では大腸内視鏡検査が
一般的。内視鏡では大腸の前処理が大切で,前夜の下剤と当日の大量の下剤内
服を要します。

 ポリープの段階では通常内視鏡的切除で治療しますが,出血や穿孔等の合併
症を起こすことがあります。ポリープ状であっても,大きさ・形状・細胞組織
によって遺残,腸管穿孔を来す可能性があり開腹手術を考慮します。開腹手術
では,がんの進行度に応じて大腸へ向かう血管・その周囲のリンパ節を切除し,
より再発しにくいよう治療します。最近では,体への負担を軽減できる腹腔鏡
下手術が広まりつつあり,食事開始の時期,退院の時期が早くなってきていま
す。ただし,病変部位・進行度によっては開腹することもあり,開腹手術ほど
は普及していません。

 大腸がん診断時に腸閉塞となっていることがあります。その場合,経肛門的
イレウス管を留置し,口側腸管を洗浄することで待機手術へ持ち込むことが出
来ます。また,手術後の癒着により腸閉塞を起こすこともあり,術後数か月は
食物繊維の多い物はなるべく避ける必要があります。そのほかに直腸がんでは
術後の排尿障害,男性ですと勃起・射精障害を起こす可能性があります。

 手術標本より,進行がんの判断がされますと抗がん剤治療が考慮されます。
より早期の段階で診断され,内視鏡的または外科的に切除するのが望ましいで
すが,不幸にして肝・肺転移,もしくは再発した場合には内服又は点滴による
全身的化学療法,場合によっては肝動注療法,ラジオ波焼灼術などを行うこと
もあります。患者さんの状態が良ければ,肝転移・肺転移もなるべく切除した
方が治癒率が高くなり,他のがんによる転移よりも,大腸がんの肝転移・肺転
移に対しては,より積極的に手術を考慮します。近年の大腸がんに対する抗が
ん剤治療はめざましい発展を遂げ,奏功率が高くなっています。海外に比べて
使用可能な薬が少なくなる,いわゆるドラッグラグも大腸がんに関しては解消
されています。種々の薬を組み合わせて内服,又は点滴にて術後補助化学療法
や,切除不能病変に対する治療を行います。抗がん剤により,切除可能になる
場合もあり,まずは積極治療を勧めます。

 特に東北地方は大腸がん死亡率が高いと言われています。飲酒や運動不足な
どの原因が示唆されており,大腸がん予防の食生活・運動などを話し,最後に
国立がんセンター監修のがんを防ぐための12箇条を示して講演を終了しました。