「シニア世代に多い目の病気について」


大島眼科 大島 隆志


総論
1.眼と脳との関係
 眼は光を取り入れて,それを電気信号に置き換え,視神経を介して脳へ伝え
ているだけである。つまり眼で物を見るとは言っても,最終的には脳で見てい
る。それ故脳梗塞や脳出血,脳腫瘍といった疾患により,視力や視野に影響が
出ることがある旨,スライド供覧し述べた。

2.眼の解剖
 眼球の一部切断図,前眼部の正面図,前眼部の断面図,涙腺・涙道の図を用
いて,眼球の主要な部位と名称とを示した。

各論
1.白内障
 白内障は,眼の中にある水晶体(レンズ)が濁る病気である。本来透明であ
る水晶体が濁ると,濁りの進み具合につれて徐々にかすんで見える様になる。
又,光がまぶしいといった症状も出る。進行すれば明らかな視力低下も現れる。
白内障の原因はいろいろあるが,最も多いのは「加齢による」老人性のもので
ある。

 根本的な治療は,手術により濁った水晶体を摘出し,眼内レンズを挿入する
ことである。なお,手術後数か月から数年経過してから再度視力低下が生じる
ことがあり,その原因として後発白内障がある。以上の内容をスライド供覧し
述べた。

2.緑内障
 緑内障は,眼圧(眼の圧力)が,その眼の許容範囲をこえることで,視神経
(眼の神経)が障害され,視野が狭くなったり部分的に見えなくなったりする
病気である。多くの場合自覚症状がないままに病状が進行するため,放置して
おくと失明に至ることもある。一口に緑内障と言っても,実はいろいろな種類
があり,その中でも眼圧が正常範囲にあるにもかかわらず,緑内障性視神経障
害がおこる正常眼圧緑内障(NTG)が重要である。
 緑内障の治療は何よりもまず眼圧を下げて,視神経障害が現状以上に進行し
ない様にすることである。そうすることで,視野障害が進行しない様にするこ
とが重要である。そのため,まず点眼薬を中心とする薬物治療が行われる。多
剤併用の薬物治療でも眼圧降下が不充分な場合や,視野障害が進行する場合は,
レーザー治療や手術が行われる。以上の内容をスライド供覧し述べた。

3.網膜静脈閉塞症
 中心静脈閉塞では,眼底に大量の出血をおこし重症である旨を,又,静脈分
枝閉塞では局所的な眼底出血をおこすことを,スライド供覧し述べた。

4.網膜動脈閉塞症
 頻度は多くはないが,発症すると即失明につながる中心動脈閉塞と,失明ま
では至らないが視野障害を残す動脈分枝閉塞とを,スライド供覧し述べた。

5.糖尿病網膜症
 軽症例から重症例までスライド供覧し,放置すると失明に至ることもある旨
述べ,糖尿病の治療が重要であると強調した。

6.高血圧性網膜症
 重症の高血圧症例のスライド供覧し,高血圧も放置すると問題であると述べ
た。

7.網膜剥離
 中高年で自覚することが多い飛蚊症の原因として,この網膜剥離もある旨ス
ライド供覧し述べた。
さいごに
 スライド供覧の他,白内障ビデオ供覧し終了。