「腰痛・関節痛でお困りの方へ」


八戸平和病院 藤井 一晃


 整形外科疾患で外来に訪れる頻度の高い症状は腰痛,関節痛です。今回のシ
ニア健康活き活き講座では腰痛,関節痛の原因,予防法,最新治療について6
月に行いました講演と同じ内容で再度講演させていただきました。その内容に
つきましては以前本誌にて掲載させていただきましたので,今回は講演後にい
ただいた質問についてご紹介いたしたいと思います。

腰痛についての質問

質問:腰痛,下肢痛があり腰椎辷り症と診断されました。手術した方がよいで
しょうか?
 腰痛,下肢痛があっても原則的にはまず薬,リハビリなど保存療法を優先し
ます。3か月以上治療しても改善しない場合は手術を検討します。筋力の低下,
排尿障害などが急激に進む場合には手術を最初から行うこともあります。

質問:八戸で腰の手術はできますか?
 現在は整形外科の中でも専門化が進んでいます。八戸市内でも脊椎を専門と
している先生がいらっしゃいますし,最先端の治療を行っています。もし手術
をする場合には担当の先生がどの手術が得意なのかを知ったほうが良いと思い
ます。

質問:尿の出が悪くなった場合には整形も受診した方が良いのですか?
 原則的には泌尿器科を受診していただき,腰が原因と思われる場合には整形
外科に紹介になると思います。

質問:腰痛持ちですが病院には行きにくく整骨院で治療しています。いいです
か?
 特別な病気が無い場合には整骨院での治療が効果的になることも多いです。
しかし腰痛には内科的な病気が潜んでいる場合もありますので,一度病院で検
査を受けた上で整骨院にて治療した方がよいと思います。

質問:検診にて骨が弱っていると言われましたが,症状はありません。治療は
必要?
 現在では骨粗鬆症も病気であり,治療よりも予防が重要と言われています。
骨密度を測定することにより容易に診断できますので,症状がなくても予防的
に薬を投与したほうが良いと思われます。症状が出てからでは遅いと思われま
す。

関節痛についての質問

質問:現在テレビで宣伝されているヒアルロン酸,サメ軟骨は効果があるのか?
 現在研究されているようですが,内服しても軟骨には達しないというのが大
方の意見のようです。まったく効果はないと断言される研究者もいることを説
明し,体には害になることはないが,サプリメントとして内服するのは良く過
度に期待しないことをお話しいたしました。実際に高い金額を出して飲んでい
られる方も何人かいらして,会場がどよめいておりました。

質問:膝の水は抜いたほうが良いのか?抜くと癖にならないのか?
 膝の水は炎症が起きるためにたまります。抜くから癖になるということはな
く,その原因が改善しないから再びたまるのです。原因を見つけるため抜いて
検査をすることもあります。原因を改善することが大切です。

質問:手術をした場合の入院期間,耐用年数について
 高齢の方で膝の変形がある方が多いせいか,手術を考えられた方から質問を
受けました。
 今回は実際の手術風景をビデオで提示いたしました。目をそらされる方もい
るかと心配しておりましたが,ほとんどの方が真剣なまなざしでビデオを見て
おりました。
 人工関節であれば現在術後3週程度で退院は可能であること,疼痛が無くな
ることをお話ししました。人工関節は磨耗(すり減ること)するため耐用年数
があります。現在の機械では20―25年の耐用年数があると言われています。

質問:手術を受けた場合の費用は?
 手術を受けたくても費用のことは気になるようです。現在では自立支援制度
というものがあり人工関節の場合には個人個人の年収から計算されて請求され
ます。負担のかかる費用ではないので費用についての心配はいらないことをお
話いたしました。

質問:娘さんが股関節に変形があると言われているがどうすればよいか?
 若い方では先天性股関節脱臼の後遺症などにより股関節に変形のある場合が
あります。
 変形が進行しないうちに骨切り術を行うことにより対処することもできます
ので,専門医を受診して正確な診断を受けることが大切であることをお話いた
しました。

質問:五十肩といわれ治療しているがなかなか治らない。
 肩痛の原因は肩を支えている腱板という組織がすり減り,炎症を起こして疼
痛が生じます。
 疼痛が改善するまでには数年を要することがあり,またリハビリを含めきち
んと治療をしないと肩の動きの制限を残してしまいますので,根気良く治療を
続けることが大切です。

 以上多かった質問を掲載させていただきました。未だに手術をすると症状が
悪化してしまうと思っている方が多いことには驚きました。まだ医師と患者さ
んのギャップは大きいようです。このような講座を通じ私達の行っている治療
についてより理解していただけるように努力していきたいと思います。