「生活習慣病を防ぐために」


向井田胃腸科内科医院 向井田 英明


生活習慣病とは
 糖尿病,心臓病,脳卒中,がんなどの病気はこれまで「成人病」と呼ばれ,
加齢とともに発症・進行すると考えられていたが,その発症には,食生活や喫
煙,飲酒などの個人の生活習慣が深く関わっていることが明らかになってきた。
そこで平成8年12月,厚生省「公衆衛生審議会」は成人病にかわり,「生活習
慣病」という概念を導入することになった。

 食生活や運動習慣,休養,喫煙,飲酒などの生活習慣によって引き起こされ
る病気を「生活習慣病」と呼ぶ。代表的な生活習慣病には,動脈硬化性疾患で
ある心臓病や脳卒中,また,動脈硬化の危険因子である糖尿病,高血圧,高脂
血症,高尿酸血症,さらにがん,アルコール性肝炎,歯周病などがある。3人
に2人はこれらの生活習慣病で亡くなる。

糖尿病
 平成14年度の厚労省の糖尿病実態踏査によれば,糖尿病が疑われる人+可能
性を否定できない人は1620万人にも及ぶ。糖尿病は三大合併症といわれる網膜
症,腎症,神経障害を引き起こすばかりではなく,動脈硬化性疾患も健常者に
比べ2〜4倍起こしやすい。

 糖尿病を予防できるかであるが,欧米で行われた肥満,耐糖能異常者を対象
にしたDiabetes Prevention Programという介入試験では,5%の減量と1日3
0分のウォーキングといった生活習慣の改善で糖尿病発症は50%減少した。糖
尿病の成因は遺伝+環境因子である。遺伝因子は変えることは出来ないが,環
境因子である食べ過ぎ,運動不足,肥満などは改善可能で,糖尿病発症はある
程度予防可能と考えられる。

高血圧,高脂血症
 動脈硬化性疾患の危険因子であるために予防,治療が必要となる。予防,治
療は糖尿病と同じで食事療法,運動療法が重要である。食事療法の基本は,摂
取カロリーの制限・肥満の是正であり,運動療法は最大酸素消費量の50〜60%
の運動を1日30分,週3日以上行う必要がある。

がんを防ぐための12か条
 国立がんセンターのホームページにはがんを防ぐための12か条が掲載されて
いる。1バランスのとれた栄養をとる 2毎日,変化のある食生活を 3食べす
ぎをさけ,脂肪はひかえめに4お酒はほどほどに 5たばこは吸わないように 
6食べものから適量のビタミンと繊維質のものを多くとる 7塩辛いものは少な
めに,あまり熱いものはさましてから 8焦げた部分はさける 9かびの生えた
ものに注意 10)日光に当たりすぎない 11)適度にスポーツをする12)体を
清潔に,これらを積極的に実行すればがんの約60%は防ぐことが出来るといわ
れる。

メタボリックシンドローム(MetS)
 MetSとは,内臓脂肪型肥満+軽い動脈硬化の危険因子が集積し,非常に動脈
硬化性疾患を起こしやすい状態である。なんと40〜74歳の男性の2人に1人,
女性の5人に1人がMetSが強く疑われる者または予備軍である。
 診断基準は,ウエスト周囲径が男性85cm,女性90cm以上で,さらに 1収縮
期血圧130mmHg以上か拡張期血圧85mmHg以上 2空腹時血糖値110mg/dl以上 3
中性脂肪150mg/dl以上かHDLコレステロール40mg/dl未満,のうち2つ以上が該
当すればMetSの診断となる。