「心臓病とワルファリン」

木村俊昭=あおば循環器内科クリニック院長、八戸市在住

「心臓の悪い人は納豆を食べられないんですか」と多くの人から質問を受けま
す。心臓病の患者さんの一部に、担当医から納豆を食べないように指導されて
いる方が居るからと思われます。

 一般に納豆禁止は、ワルファリン(ワーファリンR)と呼ばれる血液の固ま
りを抑える薬(抗凝固薬)を服用している場合に限ります。このワルファリン
は血液中のビタミンKの働きを抑え、結果的に血液の固まりを緩くする働きが
あり、血液が血管内で固まりやすい病気の患者さんに服用していただいていま
す。

 血液の固まりやすい病気には心房細動などの不整脈、心臓弁膜症、静脈炎や
静脈瘤(りゅう)などの血管病、また弁膜症術後など人工物が血管内に留置さ
れている場合などがあります。これらの病気や状態の方には、血液が固まって
引き起こされる血栓症という病気を予防するために抗凝固薬ワルファリンを飲
んでいただいています。そしてワルファリンを服用している方は、ビタミンK
の豊富な納豆やクロレラ製品、青汁などの食品を避けていただいています。

 心臓病だから納豆を食べていけないのではなく、ワルファリンを服用してい
るから納豆を食べられないのです。そしてワルファリンを服用している方は心
臓病や血管病の一部の患者さんに限られています。納豆禁止の患者さんは事前
に必ず担当医からその旨指導されていますので、特に何も言われていない方は
納豆禁止ではありません。

 また特に守っていただきたいのは、ワルファリンを服用している場合は決し
て許可なく納豆を食べないことです。ワルファリン管理にはPT−INRと呼
ばれる検査指標を用いワルファリン量を決定しますが、納豆を食べるとすぐに
ワルファリンの働きが中和され、血栓症を引き起こしやすくなるため危険です。

 抜歯など出血を伴う処置の必要な場合は、あらかじめ担当医に相談してワル
ファリン服用スケジュールの指示変更を受けてください。