「輸血2」
今回は輸血現場の状況をもう少し具体的に記します。
昭和61年に厚生省が「血液製剤使用適正化ガイドライン」を作成し、ほぼ
毎年改訂されてきています。輸血による肝炎などのウイルス感染、特に輸入製
剤の使用に伴うエイズ感染などが報道されるに至り、すべての血液製剤を国内
献血で自給するという目標が立てられました。
各病院に輸血療法委員会の設置が求められ、当院でも血液製剤の適正使用を
図るべく平成9年1月に設置され、その成果として平成21年には日本輸血細
胞治療学会の訪問審査を受審し、認定施設となりました。
八戸市立市民病院における最近10年間の血液製剤使用量の推移を図に示し
ました。手術中の出血量を減らすために手技の向上、新しい手術器具の導入に
努めるほか、自己血輸血を推進し、血液製剤の使用をできるだけ低減する方針
を取ってきました。
自己血輸血には3つの方式がありますが、ここではある程度の出血が予想さ
れる手術や分娩(ぶんべん)を控えた患者さんの血液を前もって採血して保存
し、輸血が必要となった際に戻す貯血式のことを指します。自己血輸血の長所
は、ウイルス感染やアレルギー反応などを回避できることです。
このような努力により、平成13、14年度では、血液製剤の使用、特に新
鮮凍結血漿(FFP)と血小板の使用がかなり控えられていました。
しかし平成15年度からは救命救急センターの体制が変わり、救急車搬入台
数が急増したことなどにより、各製剤とも使用量が再び増大してきています。
さらに重症の外傷、手術、分娩などによる大量出血に伴う複合性凝固障害(出
血が止まりにくくなること)に対して、大量のFFP投与が有効であるとの指
針が学会から示され、FFPの使用量が著しく増えております。
赤血球の補給は自己血輸血などでもある程度可能です。しかしFFPや血小
板の輸血は善意の献血者なしでは行うことができません。安心、確実な医療を
行っていくためにも、皆様の善意の献血をお願いいたします。