「ナースキャップ」
種市襄=種市外科院長、八戸市在住
看護師さんが頭の上に戴せているナースキャップ。19世紀後半のヨーロッ
パの病院は教会に付属しており、そこのシスターが着用していた帽子が発端と
されています。象徴という意味が大きかったものです。
このナースキャップですが、院内感染や仕事の邪魔になるので廃止しようと
いう考え方が、今では一般的になりました。
看護学生が実習に臨む前に行われる戴帽式という儀式では、学生一人ひとり
の頭にキャップを載せ、明かりを消した薄明の中でナイチンゲール像に掲げる
ろうそくから火をもらい、誓詞を唱えます。
この時、彼女らは生涯を病める人、傷ついた人のために一生身をささげよう
と誓い、それを深く心に刻み込むものなのです。
このろうそくの意味は、ナイチンゲールが戦地でテントの中の傷病兵を見回
った時のなごりです。一番感染を避けなければならない手術場では、すっぽり
髪が隠れるキャップを付けています。
消毒し、清潔にするのは当たり前ですし、ものにぶつかるという危険性や邪
魔になるということも感じられませんし、大事な手術では必須のものです。
これだけ長い歴史を持つキャップの尊厳性が、そんなに簡単に捨て去られて
良いものでしょうか。功利主義的な社会を感じさせられます。
キャップをかぶらない場合の患者さんの感想の中に、
▽清潔感が薄れる
▽きぜんとした姿勢の緊張感がないように見える―という意見もあります。
看護師さんはそれを着けたときに普通の生活から離れ、厳しい医療の現場に
向かう心構えができると思うのです。
皆さま方にとって、キャップは心の救いと思われませんか。八戸市医師会の
看護学院に来て、厳粛な雰囲気の戴帽式を一度見てみませんか。感動しますよ。