「口の中のけが」

栗橋龍一=くりはし歯科医院院長、八戸市在住

「子供の頭に歯がぶつかった」「友達に押されて転んで歯が折れた」
「サッカーの試合で激突して顔が曲がった感じがする」。
歯科医院に飛び込みでいらっしゃる患者さんはさまざまですが、急を要する場
合のほとんどが外傷のようです。
 口の中のけがは大きく、3つに分けられます。
まず唇や頬、歯肉の裂傷があります。消毒のみで自然治癒を待つ場合、縫合が
必要な場合などその処置は傷の深さによって異なります。歯を支えている顎の
骨折を伴う外傷を受けていることがあります。その場合、骨の固定が必要にな
ることが多く、手術が必要なこともあります。
 口の開閉が困難になった、咬み合せがうまくいかないなどの症状があるとき
は、骨折を疑わなければなりません。そして最後に、最も多いのが歯の外傷で
す。歯が折れた、グラグラする、歯が抜けてしまった、などです。前歯におき
ることが多く、かむことはもちろんですが、目に付きやすい場所のため見た目
にも大きな影響を与えてしまいます。
 このような歯の外傷がおきたとき、最悪の場合、抜歯になりますが、実はも
との状態に近いところまで治せることが多いのです。その成功率を高めるため
の要素が何点かあります。まずは折れた歯の欠片、抜けた歯を捜すことです。
これがないと元の状態には到底なりません。
 次に、できるだけ早急に歯科医院に行くことです。
受傷後、早ければ早いほど元に戻せる可能性が高くなります。歯科医院に来院
するまでの間、抜けた歯、折れた歯をどのような状態で保存しているかも大変
重要な要素です。
 「歯牙保存液」に入れて保存するのが最も適しているようですが、これが置
いてあるところで怪我をするとは限りません。代用品としては、アレルギーが
なければ牛乳が最も手に入りやすく使いやすいようです。周囲に牛乳もないよ
うであれば、口の中(唾液)に入れて病院に急いでください。
 最後にスポーツで外傷を受ける可能性の高い場合は、マウスピースの装着を
こころがけましょう。