「タバコの依存症」

久芳康朗=くば小児科クリニック院長、八戸市在住

 最近の調査で、20代喫煙者の約7割がニコチン依存症であることがわかり
ました。これは全世代の喫煙者における割合とほぼ同じで、吸い始めて間もな
い若者でもニコチン依存に陥っている実態が明らかになりました。

 多くの人が禁煙したいと思っていてもやめられないタバコ。その原因はニコ
チンにあります。ニコチンには二つの特性がありますが、その一つは毒物だと
いうことです。ニコチンの毒性は青酸カリを上回り、タバコ1本分のニコチン
で赤ちゃんの致死量に達します。

 もう一つの、最大の特性は依存性です。ニコチンの依存性はアルコールより
もはるかに強くヘロインと同等とされています。タバコをお酒と同じ嗜好品だ
と言い張る人がいますが、よほどの酒好きでも朝起きてすぐに飲み始める人は
いません。しかし、多くの喫煙者は朝から晩まで一日中吸い続けているのです。

 禁煙が難しいのは、ニコチン依存に加えて心理的な依存が生じるからです。
喫煙者の多くはタバコがストレス解消になると誤解していますが、実際にはニ
コチン切れのイライラが喫煙によって緩和されることをストレス解消と錯覚し
ているだけです。タバコはストレスを減らすのではなく、増やしているのです。

 しかし、仕事の合間の一服でニコチン切れ解消という「報酬」を得る体験が
長年続くと、パブロフの犬でお馴染みの条件反射により行動と喫煙が結びつい
てしまい、心理的依存が生まれます。この依存が残っていると、禁煙に成功し
て何年もたちニコチン依存から解放された人が、何かのきっかけで再喫煙して
しまうことに繋がります。この「幻想」から解放されれば後戻りすることもな
くなるのです。

 喫煙者の持つもう一つの誤解は、禁煙は苦しくつらい、自分は意志が弱いの
で禁煙できないというものですが、禁煙補助薬を使う禁煙治療で楽に禁煙でき
る時代になっています。