「葉タバコ農家の将来」

久芳康朗=くば小児科クリニック院長、八戸市在住

 喫煙や受動喫煙の甚大な健康被害、タバコ税増税の必要性などの大切な話を
後回しにして、葉タバコ農家の将来について考えてみます。

 現在、国内の葉タバコ農家数、生産額はともに減り続けており、生産者の高
齢化と後継者不足もあり将来性が不安視されています。

 一方、日本たばこ産業(JT)の葉タバコ購入量に占める国内産の割合は3
分の1にまで低下しています。もしここでタバコ1箱千円になったら葉タバコ
農家は壊滅的な打撃を受けると言われていますが、喫煙者が3分の1に減少し
ても、JTが全量を国内から購入すれば葉タバコ農家には全く影響は出ません。
これが一番現実的な解決方法と考えられます。

 しかしそれで将来まで安泰とは言えません。今後もタバコ規制政策は厳しく
なりこそすれ、ゆるむことはあり得ないのが現実だからです。

 日本を含む世界の168カ国が参加しているWHOタバコ規制枠組み条約を
ご存知でしょうか。世界中の国が手を取り合って、タバコから各国民の命を守
ることを目的に制定された公衆衛生分野で初めての国際条約です。

 そこにはタバコパッケージの画像警告、タバコ会社の広告・スポンサーシッ
プの禁止など数々の規制政策が掲げられていますが、その筆頭にあげられてい
るのがタバコ税増税です。タバコ価格を上げることで、何の費用もかけずに最
大の効果が期待できることは、諸外国ですでに証明されているのです。

 日本医師会を始めとする増税推進派は、増税による税収を、タバコによって
増加した医療費や禁煙治療の保険適用拡大にあてるとともに、葉タバコ農家の
転作補助に使うことを提言してきました。しかし、財務省は他の使い道に回す
ことのできない目的税に反対し続けています。全く理解できない理屈です。

 国民の命を守ることと葉タバコ農家の将来の両立を真剣に考えているのはど
ちらでしょうか。