「タバコ増税」

久芳康朗=くば小児科クリニック院長、八戸市在住

 いよいよ今年の秋からタバコ1箱の価格が300円から400円に上がりま
す。飲食店を含む公共の場を全面禁煙にするという厚生労働省の通知も出され
ました。この機会に禁煙しよう、あるいはご家族に禁煙してほしいと考えてい
る方も多いのではないでしょうか。

 最近なぜこのように喫煙に対する規制が厳しくなってきたのでしょう。数回
にわけてタバコと健康について考えてみたいと思います。 

 日本医師会など多くの医療団体ではタバコ1箱千円を目標とした大幅増税を
求めて署名運動を繰り広げてきましたが、2008年末には前政権の中で増税
は見送りになってしまいました。

 今回の100円の値上げは諸外国と比べても全く不十分なものですが、それ
でも首相が「国民の健康を目的に」と言明して増税することが決まった点にお
いて、これまでの政策から大きく転換してタバコ規制政策に舵を切ったものと
評価することができます。

 一方で、喫煙者からは「取りやすいところから取る安易な増税」「今までも
タバコ税を納めて国や地方に貢献してきた」といった声も聞こえてきます。ま
た、青森県南・岩手県北は葉タバコ栽培が盛んな地域であり、これ以上のタバ
コ規制政策は葉タバコ農家に壊滅的な打撃を与えるものとなりかねません。

 この点は非常に重要で、地域の暮らしを守るために真剣に考え、緊急に果た
さなくてはいけない政治的課題が山積しているのです。 「取りやすいところ
から取る安易な増税」という批判は、実はこれまでの増税についてはその通り
でした。1本1円程度の増税では一時的に税収が増えても、元々の喫煙率減少
傾向の中ですぐに減収となってしまう愚策だったのです。

 今後も毎年のように大幅増税が議論に上るはずですが、その目的は「できる
だけ多くの国民に禁煙してもらい、タバコで命を落とす悲劇を減らすこと」に
あるのです。