「社会保障制度」

本田忠=本田整形外科クリニック院長、八戸市在住

 社会保障制度は、公平で平等な社会をつくるための「スタビライザー(自動
安定装置)」です。貧富の差が広がり過ぎれば、社会は不安定になります。所
得の再分配により格差解消を図っています。

 所得再分配機能は、富める方から貧しい方への「個人間」や、若い方から高
齢者への「世代間」、このほか「地域間」に働いています。「地域間」では、
都会からの再分配が、高齢者の多い地域の生活を支えていることになります。
 大きな雇用効果もあります。

 社会保障関係業務に携わっている就業者として、医療分野では医師、歯科医
師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師などが挙げられます。その数
は、2000年の約170万人から06年の約193万人と、約1割増加して
います。

 また介護・福祉サービス従事者数の推移を見ると、2000年の約170万
人から05年の約328万人と、2倍近く増加しています。

 総務省統計局の労働力調査によると、2000年から06年までの全就業者
数は約1%減少しています。これに対し、医療や介護・福祉分野では着実に増
加しています。

 社会保障制度は、大変大きな雇用機会を提供しています。暮らしを支えるセー
フティーネットとして国民に安心感を与えるのみならず、地域における不況時
のスタビライザー機能も果たしているといえます。

 国民皆保険制度による医療は守らなければなりません。医療費は、国が定め
ている「公共料金」です。現在のように、医療費を減らすことだけが最優先さ
れ続ければ、地域医療は簡単に崩壊します。

 医療は、いったん壊れれば簡単には元に戻せません。最も優先すべきは、国
民の健康増進や医療の安全、医療の質のはずです。財源を確保して、医学の進
歩に見合った適正なレベルまで引き上げることが必要です。

 医療は労働集約産業です。質を維持するためには人員が必要です。安全は「た
だ」ではないのです。

 わが国にお金がないわけではありません。問題は、国の予算をどのように使
うかです。