「日本の医療は世界一」
本田忠=本田整形外科クリニック院長、八戸市在住
日本の医療は(1)国民皆保険(全国民が公的医療保険に加入)(2)現物
給付(被保険者は診療や検査などの医療サービスを受けられる)(3)フリー
アクセス(被保険者は希望する医療機関を選択できる)の三つの優れた特徴を
柱に、国際的に見て低額な医療費で、高水準で安心できるサービスを提供して
います。
現在の国民皆保険制度ができたのは1961年です。この制度ができるまで
は、お金がないため医療費が払えず病院にかかれなかったり、大変な思いをし
た人がたくさんいました。いつでも、どこでも、誰でも平等な医療を受けられ
る皆保険の始まりです。国民皆保険制度が導入されてから、日本人の健康指標
は大きく改善しました。
世界保健機関(WHO)が発表しているデータによると、日本の健康寿命は
世界一、健康達成度の総合評価も世界一です。しかも国内総生産(GDP)比
の医療費は、米国が世界一高いのに対し、日本は21位と、ずっと低くなって
います。これは先進国の中で最低です。安い医療費で、これらの優れた成果を
達成していることが分かります。
日本の医療が世界一といっても、それほど実感がないかもしれませんが、医
療に関して日本では当たり前と思っていることが、外国では当たり前ではあり
ません。
日本では予防注射の知らせが役所から自動的に届きますが、米国では届きま
せん。日本では救急車は無料ですが、多くの国では有料です。医療機関の受診
にも種々の制約があります。
日本では国民皆保険制度で誰もが平等に必要な医療が受けられますが、米国
では加入している保険の種類(支払っている保険料の多い少ない)で医療の内
容に差が付きます。無保険者は約5千万人いるといわれています。お金がなけ
れば医療は受けられません。
米国や英国、ドイツ、フランスなどの欧米の先進国に駐在しているわが国の
企業の社員や家族の人たちは、病気になると一時帰国し、日本の病院で手術や
治療を受けています。諸外国の医療は問題が多いようです。
日本の医療保険制度は本来は世界一優れたもので、次世代にも受け継がれる
べきものなのです。しかしそれは、少ないハード(医療機関)とソフト(医師)
で辛うじて支えている、実に危ういバランスの上に成り立っているものです。