「先天性股関節脱臼検診の勧め」
盛島利文=青森県立はまなす医療療育センター園長
乳幼児健診の項目の一つに「先天性股(こ)関節脱臼検診」があります。こ
の病気は、外傷性脱臼と異なり、痛みはなく、寝ているときの顔の向き癖、足
の動き(股関節の開き具合など)や太ももの皺(しわ)の左右差などの兆候も
見られますが、検診のない時代には歩行時期まで気付かれないことがほとんど
でした。
また、先天性股関節脱臼の発生率は0・4%(250人に1人)くらいです
が、ほかに、股関節の形成が不良で、当面の歩行は問題なくても将来痛みを生
じる病気もありますので、これらの発見には、やはり検診を受けることが一番
と思います。多くの地域では、3カ月健診で先天性股関節脱臼検診が行われて
いますが、地域によって検診方法やシステムには違いがあります。かつては整
形外科の三大疾患の一つといわれていましたが、少子化と予防法普及により発
生数は減少し、整形外科医がこの疾患にかかわる機会は減っています。そして、
地域によっては、この検診事業へ整形外科医の協力が得られず、小児科医が担
っていたり、整形外科医以外が超音波検査を行っていたり、あるいは個々に任
せるといった所もあります。
幸い、現在の八戸地域の先天性股関節脱臼検診は、これまでに諸先輩方が確
立されてきた体制と、市内整形外科の先生や市医師会、市総合健診センターの
関係者の皆さんの協力により、医師の直接診察と原則的単純レントゲン検査が
継続して行われています。
対象児の90%以上が直接診察を受け、要再検児の2次検診もほぼ100%
の受診率となっていますので、県内のほかの地域に比べても良好な検診効果を
挙げていると思います。検診や予防医学は、なくなって初めてその重要性が分
かることが多々あります。
現在の検診の利点が損なわれないように、さらに確実で手軽な体制になるよ
うに、いろいろな工夫も考えていきたいと思いますが、何よりもお母さま方に
検診をしっかり受ける意識を持っていただきたいと思います。