「糖尿病」
中園誠=中園内科クリニック院長、八戸市在住
最近の厚生労働省の推計では、国内の糖尿病の患者数は約890万人であり、
10年前に比べて約210万人も増加している。しかし、糖尿病の病名で医療
機関を受診している人は約半数にすぎない。
糖尿病患者の中には症状のない人が少なくないため、医療機関を受診しない
人や治療を中断する人が多い。長期にわたり糖尿病を放置したり、きちんと治
療しないでいると合併症を生じる。
代表的な合併症は、網膜症、腎症、末梢(まっしょう)神経障害である。こ
れらの合併症を有する患者の割合は、それぞれ約20〜40%に上る。さらに
合併症が進んで、糖尿病で失明する人は1年間に国全体で約4千人、人工透析
を導入される人は約1万5千人もいる。
さて糖尿病の治療は、高血圧症や高脂血症に比べると難しいといわれる。そ
れは薬による治療だけではうまくいかず、食事などの日常生活の管理が欠かせ
ないからである。
患者が実行している度合いを見ると、服薬やインスリン注射の実行率は食事
療法や運動療法のそれより高く、生活習慣の大きな変更を伴う治療法の実行率
は低いことが分かる。
糖尿病の治療でもっとも大切なことは、自己管理(セルフケア)行動を高め
ることである。そのため医療機関では医師、看護師、栄養士らによる療養指導
が行われている。
療養指導では、患者の生活環境や日常習慣、さらに心理的負担などを聴取し
ながら、患者が主体となって問題点の是正を図れるように指導する。
近年、療養指導を充実させる目的で糖尿病療養指導士が認定されるようにな
った。職種は看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士などで
ある。
療養指導士には、全国レベルのものと青森県レベルのものがあり、取得条件
が緩やかなため後者が取りやすくなっている。八戸市でも公的医療機関を中心
に糖尿病療養指導士が活躍しているが、さらなる充実が期待される。
国内の糖尿病患者
三大合併症の実態
▼合併症の有病率
・糖尿病網膜症…………………38.8%
・糖尿病腎症(たんぱく尿)…20.1%
・糖尿病神経障害………………36.3%
▼人工透析導入患者数
1年間で約15000人
▼失明患者数
1年間で約4000人
(厚生労働省などによる)