「メタボ増、注意必要な疾患」
山口典男=山口胃腸クリニック院長、八戸市在住
最近、生活習慣や食生活の変化によりメタボリック症候群が増えており、そ
れが消化器疾患にも大きな影響を与えるようになっています。
その一つが、胃酸や胃内容物の食道への逆流によって起こる胃食道逆流症
(GERD)です。GERDは、内視鏡で粘膜傷害を認める内視鏡所見陽性G
ERD(逆流性食道炎)と、粘膜傷害を認めない内視鏡所見陰性GERD(非
びらん性胃食道逆流症、NERD)の両者に分けられます。GERDとNER
Dは、基本的には胃酸の逆流が関与しているという点では病態的に同じです。
その症状は胸やけが主なものですが、患者さんの中には胸やけを十分に理解
できず、「ムカムカする」「胃がもたれる」「酸っぱいものが上がる」などと
訴える人も少なくありません。また、これら消化器の定型症状以外に呼吸器症
状や耳鼻咽喉(いんこう)科症状などの非定型症状が見られることがあり、消
化器科以外でもGERDを視野に入れた診療が必要なことがあります。
「のどがイガイガする」「のどが詰まる」「声がかすれる」などと訴えて耳
鼻咽喉科を受診する患者さんもいるようです。しかし、耳鼻咽喉科的な診察で
は異常が見られないものがあり、これらを咽喉頭逆流症(LPRD)として区
別し、GERDに準じて治療することもあります。
呼吸器疾患との関連としては、慢性咳嗽(がいそう)や、さしたる誘因もな
く発作を繰り返す喘息(ぜんそく)の場合にも、GERDを考えて一度は内視
鏡検査や治療を行ってみるのも大切です。
GERDの治療は、生活指導が基本です。特にアルコール、香辛料、脂肪摂
取の制限、過食や就寝直前の飲食をしないこと、前屈や腹圧のかかる姿勢を続
けないことなどが大切です。
その上で、症状改善に効果的な薬物療法を施します。治療薬としては、胃酸
分泌抑制薬であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗(きっこ
う)薬が使われます。大抵の場合、服用してすぐに効果が表れますが、勝手に
中断すると再発しやすい病気でもありますので、医師の指示に従ってきちんと
服用することが重要です。