「病院機能の細分化による医療難民の増加」
本田忠=本田整形外科クリニック院長、八戸市在住
【2週間で退院が強制される時代】
食道がんと診断されたAさんは、手術を受けた。がんは取り除けたものの、
手術後しばらくして、肺に膿(うみ)がたまるようになった。口から食べるこ
ともできず、静脈に埋め込んだカテーテルから点滴で栄養補給する状態になっ
た。管だらけになり、「退院はまだ先だろう」と思った直後、Aさんは担当医
にビックリすることを言われた。「Aさん、退院していいですよ」
国の医療制度の変更で、長期入院はなかなかできなくなっています。患者さ
んからすれば非情とも思える強硬な退院が行われるようになってきています。
【在院日数短縮は望ましいことではない】
このように入院時にすぐ退院の日を宣言されるのは、国の合理化政策のため
(医療費が増えるから大変)ですが、患者さんのことを考えれば長く入院でき
るに越したことはないわけです。しかし抜糸もしないうちに追い出し、術後の
リハビリも十分できなければ、治療成績(手術後、患者さんが無事退院したか
どうか)も当然落ちることになります。
【病床機能の細分化による医療難民の増加】
現在の国の方針は、病院を機能別に細分化して超急性期、急性期、亜急性期、
長期療養と細かく分けて、流れ作業のように、病気の時期に応じて次々と病院
を変わるようにしようというものです。しかし施設はバランスよくそろうわけ
もありません。現在は亜急性期が極端に不足しています。
厚労省はベッド数のアンバランスの杯型がおかしいと言っているわけですが、
それ以前に、医療機関をこのように機能で細分化しすぎることが問題です。各
レベルの施設数をバランスよくそろえることなど、どだい無理な相談だと思い
ます。
高度急性期、一般急性期、亜急性期、長期療養と分ければ病期の各段階で、
病院を変わろうとするたびに、入れる施設がなくて右往左往するか、在宅を選
択せざるを得ない医療難民が出るでしょう。もっと柔軟な制度づくりが求めら
れます。