「受診時定額負担について」
本田忠=本田整形外科クリニック院長、八戸市在住
【患者さんは医療費の4割を負担しています】
日本は皆保険制度ですが、全額保険で行なわれているわけではありません。
国の医療費のうち、患者さんご自身が窓口で払う一部負担金で約14%。保険
料で30%弱で、合わせて42%は患者さんが負担しています。
残りが事業主負担20%と公費37・5%で賄われています。皆保険制度と
はいえ4割は患者さん自身が負担しています。
【一部負担金について】
年齢によって異なりますが、現役世代は3割負担です。日本の窓口負担は世
界的に見ても非常に高いようです。
イギリス、カナダ、イタリアは薬剤の一部負担はあるものの、窓口負担は無
料。フランスの窓口負担は3割ですが、それを補完する共済組合があるので実
質的には無料。ドイツは一つの病気の治療にかかる費用は四半期ごとに10ユ
ーロ(1ユーロ=116円)です。
【一部負担金は3割が限度(長瀬効果)】
一部負担金が上がれば、患者さんは受診を手控えますから、医療費は減りま
す。厚労省に長瀬効果という1次式があります。
それによれば3割負担では医療需要の6割が確保されるにすぎず、4割負担
だと医療需要の5割を切ります。つまり一部負担金が4割になれば、高額すぎ
て医療保険の意味合いがなくなることになります。
【受診時定額負担制度に反対する】
政府は「社会保障と税の一体改革」で、現在の3割負担に上乗せで、初診時
に200円、再診時に100円程度を支払う「受診時定額負担制度」について、
2015年度の導入を目指すとしました。これでは受診回数の多い方(高齢者、
病気がちの方)ほど負担が増えることになります。
これ以上自己負担を上げれば、ほとんど公的保険の意味合いがなくなります。
医療機関を受診するよりは売薬で済ませる方が多くなります。医療財源は、公
的保険である以上、患者さん自身からではなく、幅広く保険料に求めるべきで
あろうと思われます。