「混合診療について」
本田忠=本田整形外科クリニック院長、八戸市在住
【自由診療は禁止されていません】
日本においては、効果の分からない治療でも保険併用さえしなければ自由に
受けられます。単価も自由です。
【混合診療は禁止】
混合診療とは、病気の一連の治療で保険診療と自由診療を同時に行うことで
す。併用は禁止です。しかし一連の治療でなければ可能で、例えば、がんの治
療中に、そのがんに関する保険外診療はできません。しかし、別な病気、例え
ば自由診療である交通事故の治療は同時にできます。
【どういうことが起こるの?】
がんで、保険未収載の最新治療を希望した場合、保険診療と併用はできませ
ん。自由診療を受けた時点から、保険診療部分を含めた全てが自由診療となり
ます。あるいは別な施設で自由診療を行うことになります。これを不合理とし
て、裁判で争われましたが、残念ながら最高裁で敗訴となりました。
【なぜこのような制約があるの?】
理由は、財政的なものと、質の担保があります。財政的な観点からは、保険
診療と自由診療が同時併用されれば、効果の分からない治療に保険財源(80
%が自由診療ならその残り)が使われます。
一方、世の中には、効果の分からない治療は有望なものから気休め程度のも
のまで多種多様あり、際限がありません。併用可とすれば、到底保険財源が持
ちません。乏しい保険財源を守るためのやむを得ない制度です。
また、質の担保の観点からは、最新の治療になればなるほど実験的な要素が
多くなります。実際は全く効果がないかもしれません。そのような治療は元来
自由診療であるべきで、効果の確定した治療が保険適応になるべきです。
外国の新薬の保険収載までのタイムラグが問題になっています。これは今回
のTPP(環太平洋連携協定)で議題に上るでしょう。患者さんのために当然
新薬は早期認可されるべきでしょうが、現在薬害訴訟が多くなっています。副
作用などを考えれば拙速は避けるべきと思われます。
現在、保険適応になっていない、しかし有望な高度先進医療は、質の担保の
ために届け出制とし、施設を限って保険診療との併用ができるように整備され
ました。薬剤は薬価収載前でも、公知申請と同時に保険適応になりました。