「心房細動の抗凝固療法C」

 今回は抗凝固療法にまつわる問題点についてお話しします。

 まずは医療費です。従来から使われているワルファリンは3種類の用量があ
り、いずれもおおよそ一錠10円ですので、1日薬価は40円くらいです。

 しかし、ダビガトランやリバーロキサバンは、一般的な処方で1日薬価が約
530円で、年間に換算すると19万円以上にも上ります。ワルファリンと比
べ、10倍以上の薬価差は現場で働く医療者にも悩みの種です。

 次に、副作用としての大出血です。新薬には納豆などの禁忌食品はありませ
ん。作用を増強する薬はありますが、併用注意の薬剤はワルファリンのそれよ
り少なく、比較的管理しやすいという特徴があります。

 しかし、特に高齢者に多いことですが、新薬ではいったん出血すると大出血
になる傾向が強く、拮抗(きっこう)剤がないために、出血している間は輸血
を続けるしかありません。投与量ならびに腎、肝機能やヘモグロビンなどの出
血の指標となる検査を行いながら管理します。

 最後に適応症です。ダビガトランやリバーロキサバンは、今のところ非弁膜
症性心房細動にのみ保険適応があります。

 これに対して、ワルファリンは心房細動全般のみならず、血栓性静脈炎や肺
血栓塞栓(そくせん)症など幅広い適応があります。現状では、新薬の適応症
は非常に限られているのです。

 ちなみに非弁膜症性心房細動とは、リウマチ性僧帽弁疾患とそれに対する外
科的治療後の心房細動ではないということであり、単に心房細動と心弁膜症が
合併していないということではありません。