「体に優しい腹腔鏡下手術」
細井信之=八戸赤十字病院外科副部長
<はじめに>
腹腔(ふくくう)鏡下手術はカメラを用いた手術≠ニもいわれ、ポートと
呼ばれる細い筒を三本から五本程度おなかに挿入し、カメラで映し出された映
像を見ながら専用の器具を使って手術をする方法です。小さい傷で行うことが
でき、社会復帰も早期にできることがあります。また、術後の癒着も少ないこ
とが予想され、腸閉塞(へいそく)などが起こり難い可能性があります。
このように、腹腔鏡下手術の優れた点として低侵襲性(患者さんに優しく、
負担が少ない)がクローズアップされ、普及してきています。
その一方で、▽画面での奥行きの把握が難しい▽触診ができない▽器具やア
プローチの方向が制限される▽出血すると視野が悪くなり止血に手間取る−な
ど、開腹手術とは異なる注意点があります。
これらの対策として術前診断の精度向上や、手術展開の仕方、使用器具の操
作に習熟するよう努めています。
当科では腹腔鏡下で以下の手術を行っています。
【大腸手術】
良性腸疾患や、内視鏡治療の適応とならない早期大腸癌(がん)は腹腔鏡下
手術の良い適応です。また、癌手術の原則を守った適切な手技により、進行大
腸癌に対しても根治性を損なわない手術として有用と考えます。
【胃手術】
比較的小さな胃粘膜下腫瘍(しゅよう)に対しては胃部分切除を行い、術前
に明らかなリンパ節転移のない早期胃癌に対しては幽門側(胃の後ろの方)切
除、胃全摘術を行っています。開腹手術と変わらない適切な手技を心掛けてい
ます。
【虫垂手術】
虫垂炎は、俗に盲腸炎とも呼ばれます。炎症が起こった虫垂を根元で切除し、
取り出します。おなかの中を見渡すことで併存疾患にも対応可能です。
その他にも胆のう(胆石)手術、胃十二指腸潰瘍穿孔(かいようせんこう、
穴が開く)手術、脾臓(ひぞう)手術、異物の誤嚥(ごえん)例や炎症による
小腸手術、腸閉塞手術等に対しても適応と判断すれば腹腔鏡下手術を施行して
います。
腹腔鏡下手術の問題点を克服し解析することで、さらなる適応疾患の拡大や、
より優れた低侵襲手術への進化が期待されます。
「提供・細井信之医師」