「口は生きる源」
澁田大路渋田歯科クリニック院長=八戸市在住
超高齢化社会を迎えた日本ですが、誰もが元気でいたいと思い、介護認定を
受けるような事態にならないことを願っています。
介護予防は要支援者のみならず、健康な高齢者でも、生活の質を損なわない
ために必要な対策であると言えます。それには、日々の食事を通じた栄養の改
善、そして運動機能や口腔(こうくう)機能の向上が重要です。
栄養の面では、カロリーや栄養素だけが取り上げられますが、かむことによ
り体への吸収が違ってきます。
また、奥歯がない人は低栄養傾向にあることが厚生労働省の調査で分かりま
した。
当然ながら運動にも影響があります。かみ合わせが安定することによって体
のバランスが良くなり、寝たきりだった人が立ち上がって普通に仕事ができる
ようになった例もあります。
つまり介護予防の3大要素である栄養、運動、口腔機能に、歯科は全て関係
しているのです。歯が多いほど認知症になりにくかったり、全てにかかる医療
費が少なかったりすることが分かってきています。
さらに、かむことにより脳が刺激され、記憶が良くなり、思考力も高まり、
やる気まで出てくるということも証明されています。
歯科医師会では「8020運動」により、歯の大切さをお伝えしています。
80歳になっても20本以上自分の歯を保とうという運動で、少なくとも20
本以上自分の歯があれば、ほとんどの食物をかみ砕くことができ、おいしく食
べられます。
ところが、既に20本より少なくなってしまった人もたくさんいます。でも、
大丈夫です。
図にありますように、調査で「仕事(家事)」「自立歩行」「日常生活の自
立」について、「できる(している)」と回答した人の割合は、自分の歯が1
0本未満で入れ歯を入れている人と、20本以上の人では大差ありませんでし
た。義歯の装着でADL(日常生活動作)、QOL(生活の質)を改善するこ
とができます。
「口は生きる源」です。元気で健康であるために、かかりつけの歯科医院を
決めて定期的に通うことをお勧めします。